【実質賃金とは】給与が増えても生活が苦しいのはなぜ?実質賃金低下への対策は?
このところ、賃上げに関するニュースがよく報じられています。
しかし、たとえ給与が増えたとしても、「これで生活が楽になった」という話はあまり聞きません。なぜなのでしょうか?
確かに!僕も疑問に思ってたよ。
その理由は、給与が増えてもそれ以上に物価が上昇して追いつかない状況が最近続いているからニャ。
なるほど!本当に物価が高くなってるよね…。
前は何も考えずに買ってた商品も、今じゃ買うのに迷っちゃうくらい。
実際、そのことを示す「実質賃金」は、マイナスが続いているニャ!
今回は、給与が増えても生活が苦しい理由と、実質賃金が上がらない今を乗り切る対策を一緒に考えてみるニャン。
・日本の実質賃金はマイナスが続いているため、給与が上がっても生活が楽になった実感は得にくくなっている。
・物価上昇に加えて、税金や社会保険料の負担増も、生活が楽にならない原因に拍車をかけている。
・今のインフレは今後も続く見通しで、何もしないでいた場合、生活が苦しいまま、もしくはさらに苦しくなる可能性があるため、なるべく早くから、実質賃金が上がらないことを踏まえた対策をするべき。
目次)
1.給与が上がっても、以前より生活が苦しい…!一体なぜ?
1-1.生活が苦しい理由
1-2.今後も実質賃金のマイナスは続く可能性が高い
2.実質賃金が上がらないことへの対策は?
2-1.①支出を減らす
2-2.②お金自身に働いてもらう(運用利率を上げる)
2-3.③収入を増やす
1.給与が上がっても、以前より生活が苦しい…!一体なぜ?
生活が苦しい理由
日本人の平均給与は443万円(国税庁「民間給与実態統計調査」2021年)。
前年の2020年は433万円でしたから、平均給与は10万円増えている計算です。
皆さんのなかにも、給与が増えたという方がいるかもしれません。
でも、冒頭でも紹介したとおり、日本の実質賃金はマイナスが続いているため、給与が上がっても生活が楽になった実感は得にくくなっているニャ。
賃金には、大きく分けて名目賃金と実質賃金があります。
・名目賃金 → 働くことで実際に受け取った給料の額
・実質賃金 → 物価の影響も加味した給料の金額
を表します。
2021年3月から2023年6月までの名目賃金と実質賃金の月別の推移(前年同月比)は、次のグラフのようになっています。
月により多少の違いはありますが、2021年時点では実質賃金が名目賃金を上回っている状況もあります。
しかし、2021年9月以降は名目賃金が実質賃金を上回っています。さらに、推移がわかりやすいようにあえて実質賃金にのみ数値をつけましたが、2022年4月以降、15ヶ月連続で実質賃金はマイナス(2023年6月時点)になっています。
つまり、名目賃金より実質賃金が少ないということは、給与の総額は増えているものの、物価を加味した賃金は相対的に減っているということニャ!
そういうことかぁ。こう見ると、僕たちはお金でいろんなものを購入するわけだから、本質的に重要なのは実質賃金で、その上昇が必要だね。
実質賃金がずっと下がっているから、「給料が上がったから生活が楽になった」とはならないわけだね。ハァ、悲しい。
今後も実質賃金のマイナスは続く可能性が高い
実際、物価はどんどん上昇を続けています。
総務省がモノやサービスの価格の変動を調べて公表する「消費者物価指数(CPI、2020年=100)」は、2021年12月以降上昇を続けており、天候によって値段が左右される生鮮食品を除いた「生鮮食品を除く総合」(前年同月比)は次のように推移しています。
2022年4月以降は毎月2%、さらに9月以降は毎月3%を超える上昇率となっています。
そんなスピードで上昇してるの!?そりゃ「また高くなってる!?」と思うわけだ…。
・食品の値上げラッシュ!原因は?いつまで続く?家計を抑える対策を教えて!
インフレには、好景気の中で需要が増えることによるディマンドプルインフレと、商品を作るためのコストが上昇することで商品価格が上がるコストプッシュインフレの2つがありますが、今のインフレは明らかに後者。
これだと、景気は良くならないし、実質賃金は低下してしまうニャ。
このインフレに加えて、“税金の負担が大きい”ことも生活が楽にならない原因に拍車をかけているニャン!
2000年代は35%程度だった国民負担率(税金と社会保険料の負担の割合)は、2010年代から少しずつ上昇。2022年度の実績見込みは47.5%と、ほぼ5割に増加しています。「江戸時代の五公五民※と同じ」と嘆く声も聞かれます。
高額な税金の取り立てが生活を圧迫するのは、江戸も令和も変わりません。にもかかわらず、政府は新たな増税に動くかもしれないという報道も話題になっています。
※江戸時代の年貢率を表現した言葉。収穫した米の5割を領主が取り、残りの5割が農民の手元に残る場合のこと。
物価は上がるけど、実質賃金は上がらない上に、税金や社会保険料の負担増で手取りも増えない…。このままじゃ生活は苦しくなる一方だよ…!
2.実質賃金が上がらないことへの対策は?
実質賃金が上がらないといっても、僕たちはその中で生活していかなければならないニャ。
そこで、実質賃金が上がらないことを踏まえて、お金を貯めて、増やす対策をしていくニャン!
お金を貯めて増やす方法にはいろいろありますが、突き詰めると次の3つしかありません。
・支出を減らす
・収入を増やす
・お金自身に働いてもらう(運用利率を上げる)
どれができてもお金が増えますが、優先順位の高いことから順に紹介します。
①支出を減らす
お金を貯めて増やすために、最優先したいのは支出を減らすこと。
収入は、増やしてもそこから税金や社会保険料が引かれてしまうので、思ったより手取りは増えません。しかし節約は、たとえば1万円削減できたら1万円使えるお金に余裕ができます。
上手に節約するポイントは、金額の大きなもの・効果が持続するもの・我慢が不要なものを優先すること。
具体的には、まず固定費を優先します。固定費は、一度見直せば以後は節約効果がずっと続くため効果が高く、楽に削減できます。固定費には家賃(住宅ローン)・通信費・光熱費・保険料などがあります。ひとつずつ見直して、確実に減らしていきましょう。
固定費が減ったら、無駄遣いや変動費についても同様に確認して、削れるものがあったら削っていきます。
また、日常的に「ポイ活」をして貯めたポイントを買い物などに活用することも、日々の支出を減らすことにつながるニャ!
ポイ活に関しては、次の記事で詳しく説明してるからぜひチェックしてニャ!
・Tポイントで「ポイ活」するならコレがおすすめ!Tポイントを賢く貯めて使おう!
・歩くだけでポイ活になる!?健康になってポイントも貯まるお得なアプリをご紹介!
支出の上手な削減方法や節約方法については、過去の記事でも紹介しているから、合わせて見てくださいね!
・止まらない電気代の値上げ…!その原因と電気代節約のコツ
・食品の値上げラッシュ!原因は?いつまで続く?家計を抑える対策を教えて!
・生涯で数百万円の節約に!?携帯代を今すぐ見直そう!』
また、税金も節約できる可能性があります。
毎年の年末調整や確定申告では「所得控除」といって、人それぞれの事情を汲んで税額計算のもとになる課税所得を減らすことができます。
所得控除には次の15種類があります。
利用できる控除はもれなく使うことで、支出を減らし、手元に残るお金を増やすことができます。
・「サラリーマンの私も必要?」確定申告のメリットと方法を解説!
・こんなのも対象、家族分も含められる!実は知られていない医療費控除で所得税、住民税がお得!
②お金自身に働いてもらう(運用利率を上げる)
お金を銀行預金に預けている人はたくさんいるでしょう。
しかし、大手銀行の普通預金の金利はわずか年0.001%なのをご存知ですか。
100万円を預けても、増えるお金はわずかに年10円(税引前)ですから、2%、3%といった物価の上昇に勝てるわけがありません。
一方、投資の場合は、元本保証こそありませんが、銀行預金よりもお金を増やせる可能性があります。
今後もインフレが進むならば、「インフレに強い資産」を持つことが大切です。
インフレに強い資産には、株や投資信託といった有価証券、外国債券のような外貨建ての資産、不動産や金といった実物資産があります。
これらは、インフレに合わせて値上がりする傾向があるため、インフレ対策になるというわけです。
この中で、最も手軽で、値動きと上手く付き合う「長期」「積立」「分散」投資が無理なくできるのが投資信託の積立投資ニャ!
投資信託は、投資家から集めたお金をまとめて運用の専門家が投資してくれる金融商品です。
「つみたてNISA」や、2024年から始まる「新NISA」のつみたて投資枠を活用すれば、運用で得られた利益を非課税にすることもできます。
老後資金を用意する目的なら、iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)もオススメニャ!
iDeCoは、毎月掛金を積み立てて運用をし、積み立てた金額や運用益を60歳以降に老齢給付金として受け取る制度です。こちらもNISAと同じく運用益を非課税にできる上に、毎月の掛金を全額所得控除できるため、自分のためにお金を貯めながら税金を安くすることができます。
人間が1日に働ける時間はせいぜい8〜10時間。勤労だけで得る収入には限界があります。
そこで、働いている時間以外や寝ている間にもお金を稼いでくれるようなインフレに強い資産を持つことが重要になるのです。
・ほったらかしでお金が増える!?お金を貯めるには仕組み化が大事!
・どれくらい税金が減る?老後資金作りにiDeCo(イデコ)がおすすめな理由を解説!
・企業型確定拠出年金とiDeCoの併用が可能に!変更点は?併用するとお得かシミュレーション
・2024年スタート!新しいNISAの賢い活用方法と疑問をQ&A式でプロが解説!
・NISAで投資をすると利益は出るの?初心者でもできる?経験者に聞いてみた
③収入を増やす
もちろん、働いて収入を増やせればそれに越したことはありません。
本業をがんばって、会社や周りに認められるような存在になると、収入も自ずと上がっていくでしょう。
ただ、はじめにお話ししたとおり物価の上昇や、税金・社会保険料の負担増を超えるスピードで収入を増やしていく必要がありますし、がんばりが必ずしも給与に反映されるとは限りません。ですから、支出を減らし、お金自身に働いてもらうことを優先しましょう。
また本業とは別に副業をもって、月2万円〜3万円程度稼ぐことができたら生活を楽にするための強い味方になってくれるでしょう。副業で磨いた知識やスキルが転職に役立つこともあるかもしれません。
日本の実質賃金は2023年6月時点で15ヶ月連続マイナスニャ。
実質賃金がマイナスになると、たとえ名目賃金で給与の額面が増えたとしても、生活はどんどん苦しくなってしまうニャ。
何もしないままだと、生活は苦しくなる一方だし、いずれ今までの生活を続けていくこと自体ができなくなってしまうかもしれないね。
だからこそ今回教えてもらった支出の削減、投資、そして収入増にできるところから取り組んでいくことが大切だね!
やるかやらないかで将来の資産は大きく変わるだろうな!必要なお金を作れるよう、行動に移していこう!
ということで、僕も気を付けるから、マネ娘はコンビニでの無駄遣いはほどほどにね(笑)。
…さっき新商品のお菓子3つ買ってきちゃった
(やれやれニャ…)
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執筆者:頼藤 太希
(株)Money&You 代表取締役/経済ジャーナリスト
中央大学客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に(株)Money&Youを創業し、現職へ。女性向けWebメディア『FP Cafe』や『Mocha(モカ)』を運営すると同時に、資産運用・税金・Fintech・キャッシュレスなどに関する執筆・監修、書籍、講演などを通して日本人のマネーリテラシー向上に注力している。『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『はじめての資産運用』(宝島社)、『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)など著書多数。日本証券アナリスト協会検定会員、ファイナンシャルプランナー(AFP)、日本アクチュアリー会研究会員。