祖父母から孫へ教育資金を援助!非課税で贈与する方法と注意点

祖父母から孫へ教育資金を援助!非課税で贈与する方法と注意点

かわいい孫のために教育資金を援助したいと考える祖父母の方は多いでしょう。「遺産相続対策」として生前での援助を検討しているケースもあるのではないでしょうか。一方で、子育て世代の夫婦が経済的負担軽減のために親に援助を相談するケースもあります。

マネ娘母

もし孫ができたら金銭面でも力になりたいわね。子どもの教育費は、思った以上にかかるもの。


マネ娘父

そうだな。孫の教育費を援助する場合、贈与税はかかるんだろうか。マネキン、今後のためにも教えてくれない?


マネキン

任せてニャ!孫へ教育資金を贈与する場合の基本的な知識から、非課税にする方法や注意点、具体的な手続きまで詳しく教えるニャン。

子どもの教育資金の備え方や制度については、こちらの記事で解説しています。
高騰する子どもの学費!お金の備え方から、学費の無償化など使える制度・手段を紹介!
子ども一人約2,500万円!?教育資金の賢い貯め方・作り方
 


・贈与のメリットは、
- 孫の将来のための有効な支援となる
- 計画的に行えば相続税の軽減につながる可能性がある
- 自分の希望通りに財産を引き継げる
・原則として、個人間の贈与では受け取った側に「贈与税」がかかるが、「教育資金として援助する」など非課税にする方法がいくつかある。
・贈与する場合に重要なのは贈与するタイミングで、非課税にするコツは、必要な都度、相当する金額を贈与すること。
・贈与のメリットがある一方で、贈与をしすぎて、自身の老後資金や介護資金が不足しないよう配慮するなど注意点もあり。

 

目次)

1.孫への教育費の贈与は税金がかかる?
1-1.贈与とは
1-2.贈与の基本
1-3.贈与税を非課税にする方法
2.非課税にする方法①:教育資金として援助する
2-1.贈与税がかからない教育費と注意が必要な教育関連の費用
2-2.教育費として使った証拠を残す方法
3.非課税にする方法②:援助する金額を年間110万円までにする
3-1.贈与税の基本
3-2.贈与税の速算表
3-3.贈与税の計算方法と計算例
4.非課税にする方法③:「生前贈与加算」の対象外になるようにする
4-1.生前贈与加算とは
4-2.生前贈与加算の期間延長に注意
4-3.生前贈与加算の対象になる主なケース
4-4.生前贈与加算を避けるための対策
5.贈与する場合に必要なものとやっておくべきこと
6.孫への教育資金の贈与についてまとめ

1.孫への教育費の贈与は税金がかかる?

1.孫への教育費の贈与は税金がかかる?

孫への教育費の贈与は愛情表現の一つですが、税金面での配慮が必要です。

マネキン

まずは贈与の基本概念と税金の関係について説明するニャ!

贈与とは

贈与とは、法律上、無償で財産を与えることを指します。具体的な事例を挙げてみましょう。

・お金やモノを無償で他人に与えること
・口約束でも成立する可能性がある(例:「高校卒業時にスマホを買ってあげる」という約束)

マネキン

口約束だけでは後にトラブルの元となるかもしれないから、書面での確認が望ましいニャ。

贈与の基本

原則として、個人間の贈与では受け取った側に「贈与税」がかかります。これは親族間でも同様です。一定額以上のお金や資産の贈与があったときには、贈与税に留意が必要です。

ただし、贈与税には基礎控除額が設けられており、1年間(1月1日から12月31日まで)の贈与額が110万円以下であれば、贈与税は課税されません。
詳しくは後述の「贈与税の基本」で解説をいたします。

贈与税を非課税にする方法

贈与税がかからないようにする方法はいくつかあります。具体的な方法は以下の3つです。

①教育資金として援助する
②援助する金額を年間110万円までにする
③「生前贈与加算」の対象外になるようにする
マネ娘父

教育資金としてなら贈与税が掛からないんだ!

これらの方法について、次項で詳しく解説していきます。

2.非課税にする方法①:教育資金として援助する

2.非課税にする方法①:教育資金として援助する

教育資金の贈与には、特別な非課税措置があります。教育資金贈与を非課税にするための具体的な方法と注意点を解説します。

まず、生活費や入学金・学費等、「通常必要と認められるもの」については、そもそも贈与税はかかりません(一般的な金額(学資なら400万円前後)を超えない範囲が目安)。
以下の表に目安としてまとめました。

贈与税がかからない教育費と注意が必要な教育関連の費用

贈与税がかからない教育費と注意が必要な教育関連の費用

また、数年分の教育費をまとめて贈与をした場合、すぐに教育費として使わない部分については、贈与税の対象になる可能性があります。教育費として受け取ったのに、投資に回して増やそうとする行為もNGです。

マネキン

つまり、贈与するタイミングを見るのが重要で、必要な都度(それに相当する金額を)贈与することが非課税にするコツなんだニャ!

教育費として使った証拠を残す方法

マネ娘母

でも援助されたお金を教育費として使ったことは、どうやって証明すればいいの?


マネキン

教育費として使った証拠を残すためには、以下に挙げる方法を参考にするといいニャ。

1. 祖父母が直接、学校や塾に振り込む

2. 学校や教育機関が発行した領収書や振込明細を保管する
・支払者名、支払日、金額、支払内容が明記されていること

3. 学校などの書面を保管する
・年度や学期初めに配布されるプリント
・教科書の購入票などの関連書類

4. 教育資金専用の預金口座を用意し、そこから教育費を支払う
贈与されたお金と普段使っているお金が混ざらないようにしておくこと

マネキン

子育て夫婦から親に相談し、贈与をしてもらうときは、上記のような方法で証拠を残すようにお願いしてニャ!

3.非課税にする方法②:援助する金額を年間110万円までにする

3.非課税にする方法②:援助する金額を年間110万円までにする

贈与税には基礎控除額があり、これを活用することで税負担を軽減できます。贈与税の基本と計算方法について詳しく解説します。

贈与税の基本

1年間(1月1日から12月31日まで)に110万円までの贈与であれば非課税となります。
年間110万円以上の贈与があった場合は贈与税がかかります。贈与税の税率は、贈与をする人と受け取る人の関係によって異なります。

① 直系尊属(祖父母や父母など)やきょうだい間からの贈与の場合:「特例税率」の適用
条件:贈与を受ける年の1月1日に受贈者が18歳以上であること。(2022年3月31日以前の贈与については受贈者が20歳以上であること)

② ①以外の人(パートナー、パートナーの父やきょうだいなど)からの贈与の場合:「一般税率」の適用

贈与税の速算表

特例税率の方が一般税率よりも少し低くなっています。以下は、贈与税の速算表です。

<贈与税の速算表>

贈与税の速算表

贈与税の計算方法と計算例

贈与税は以下の計算式より算出を行います。

(贈与を受けた財産の価額-基礎控除額)×税率−控除額=税額

マネキン

複数の人から贈与を受けた場合は、それらを合算して税額を計算するニャ。


例えば、祖父から150万円、祖母から150万円の贈与を受けた場合、合計300万円として計算します。

1. 基礎控除額:110万円
2. 課税価格:300万円 − 110万円 = 190万円
3. 税率(特例税率の場合):10%
4. 控除額:10万円
5. 贈与税額:(190万円 × 10%) −10万円 = 9万円
結果: 300万円の贈与に対して、9万円の贈与税がかかります。

注意する点は、毎年同じ金額を同じ時期に贈与すると定期贈与(まとまった金額の分割贈与)とみなされる可能性があることです。最悪の場合、まとまった金額に対して贈与税がかかることもあります。

毎年贈与をする場合は、時期をずらしたり、金額を変えたり、贈与毎に新たな贈与契約を締結する、などの対策をしておきましょう。

4.非課税にする方法③:「生前贈与加算」の対象外になるようにする

4.非課税にする方法③:「生前贈与加算」の対象外になるようにする

相続税対策として教育費の生前贈与を行う際、「生前贈与加算」に注意が必要です。この制度の概要と対策について解説します。

生前贈与加算とは

「生前贈与加算」とは、相続開始(=人が亡くなる)前の一定期間内に行われた贈与を、その人が亡くなった後の相続財産に加算(持ち戻し)して相続税を計算する制度です。

相続税は亡くなった際の相続財産が一定の金額を超えるとかかり、さらに、財産額が多くなるほど税率が上がる仕組みです。

一方で、贈与税は個人から財産を受け取った場合にかかる税金で、相続とは別物です。一般的には、生前に贈与を行うと節税につながるとされています。そのため、生前贈与加算が適用されてしまうと、贈与ではなく相続財産に持ち戻されて課税額が増えてしまいます。

マネ娘父

えぇ!どうしてこんなルールがあるの?


マネキン

これは、税率が高い相続税を避けるために、亡くなる前に財産を贈与する行為に歯止めをかける目的があるニャ。

このルールがなければ、多くの人が亡くなる直前に財産を家族に贈与して、相続税から逃れようとするかもしれません。

このように、生前贈与加算は、相続税を公平に計算するためのルールと言えます。また、このルールには期間があり、現在は人が亡くなる3年前までの贈与が対象になります。

生前贈与加算の期間延長に注意

前述の通り「相続開始前の一定期間」は、「3年以内」ですが、実は、2024年1月1日以降の贈与から順次「7年以内」に延長されています。

実際には、2026年開始の相続までは加算期間は3年です。その後、段階的に延長されて、2031年開始の相続以降は7年間の加算となります。以下が移行のスケジュールです。
 

・2024年1月1日~2026年12月31日:相続開始前3年間
・2027年1月1日~2030年12月31日:2024年1月1日~相続開始日までの年数
・2031年1月1日以降:相続開始前7年間に完全移行

また、2027年1月1日以降の相続については、相続開始前4年目から7年目までの贈与の合計額のうち100万円までは相続財産に加算されません。

生前贈与加算の対象にならないメリットは、相続税の課税を一世代分飛ばせることです。

マネキン

例えば、祖父母から孫への贈与の場合、通常、孫は祖父母の相続人ではないため、祖父母の子である親世代への相続税の課税を回避できるニャ。さらに、遺産分割をする必要がないため、不要な争いを防ぐメリットもあるニャン。

「生前贈与加算」の対象としないためにも、対象になるケースを正しく知っておきましょう。

生前贈与加算の対象になる主なケース

生前贈与加算の対象にならないためには、以下のケースには要注意です。

ケース① 相続開始前7年以内の贈与
・前述の通り、原則として、この期間内の贈与は相続財産に加算されてしまいます。

ケース② 孫が未成年の場合の贈与
・親権者(孫の親)が管理する場合、祖父母から親権者への贈与とみなされ、相続財産に加算される可能性があります。

ケース③ 相続時精算課税制度を選択した場合
・この制度を選択すると、贈与時期に関わらず、すべての贈与が相続財産に加算されます。
・ただし、2024年1月1日以降は、年間110万円の基礎控除が適用されます。

ケース④ 孫への教育資金の一括贈与制度を利用した場合
この制度を利用した場合、原則として生前贈与加算の対象にはなりませんが、以下の点に注意が必要です。
・贈与者(祖父母)の死亡時に残額がある場合
・孫が30歳に達したなどの理由から教育資金管理契約(※)が終了し、その後一定期間内(3〜7年の期間)に祖父母が亡くなった場合
これらの場合は、相続財産に加算されます。
※贈与された資金が教育資金として使われることを金融機関が領収書等により確認・記録・保存する期間

生前贈与加算を避けるための対策

生前贈与加算の対象にならないために、有効な対策を以下に挙げておきます。

① 贈与のタイミングを計画的に設定する
前掲の生前贈与加算の改正を鑑みて、祖父母が元気で、かつ、なるべく早いうちから計画し、贈与を始める。

② 贈与の金額を分散させる
年間110万円以下の贈与を複数年に分けて行う。

③ 教育資金の贈与を適切に管理する
未成年の孫への贈与の場合、使途を明確にし、記録を残す。

④ 相続時精算課税制度の利用を慎重に検討する
メリット・デメリットを十分に理解した上で選択する。

これらを組み合わせて贈与計画を立てる場合は、生前贈与など相談したい事例の記事などから検索して、無料相談を行なっている専門家(税理士・FPなど)に相談するのもオススメです。

5.贈与する場合に必要なものとやっておくべきこと

5.贈与する場合に必要なものとやっておくべきこと

贈与を円滑に行うためには、適切な準備と手続きが重要です。
マネキン

ここでは、贈与に必要な書類や確認事項、手続きの流れを順に説明するニャ。

<必要な書類>
・贈与契約書
・贈与者の印鑑証明書
・贈与された財産の証明書類(預金通帳のコピーなど)
・贈与税の申告書(必要な場合)

<贈与前の確認事項>
贈与を行う前に、贈与する側とされる側で以下の点を確認しましょう。
・贈与の目的と金額
・贈与のタイミングと方法
・贈与税の発生有無
・将来の相続税への影響

<贈与契約書の作成>
親族間でも贈与契約書を作成することをおすすめします。契約書には以下のような内容を記載します。
・贈与者と受贈者の氏名・住所
・贈与の目的
・贈与財産の内容と金額
・贈与の時期
・贈与の条件(もしあれば)
・作成日
・両者の署名・捺印

<贈与税の申告>
贈与される側として、贈与税の申告が必要な場合は、以下の点に注意しましょう。
・申告期間:贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日まで
・申告先:居住地を管轄する税務署
・注意点:申告を忘れると無申告加算税などのペナルティが課される可能性あり

マネキン

贈与税申告をする時は、以下をチェックしてニャ!

<贈与税申告のチェックリスト>
◻︎  贈与税の計算を正確に行った
◻︎  必要な書類をすべて準備した
◻︎  申告書の記入内容に誤りがないか確認した
◻︎  申告期限を確認し、余裕を持って提出する予定を立てた
◻︎  不明点があれば税理士や税務署に相談した

初めて申告する時は、税理士や税務署の無料相談窓口などで相談することをおすすめします。

6.孫への教育資金の贈与についてまとめ

6.孫への教育資金の贈与についてまとめ

孫への教育資金の贈与は、慎重に計画し実行することで大きなメリットがあります。
最後に、これまでの内容を総括し、贈与を検討する際の重要なポイントをまとめます。

<贈与のメリット>
・孫の将来のための有効な支援となる
・計画的に行えば相続税の軽減につながる可能性がある
・自分の希望通りに財産を引き継げる

<注意すべきポイント>
・贈与をしすぎて、自身の老後資金や介護資金が不足しないよう配慮する
・家族間で不公平感が生じないよう気をつける
・税制や法律の変更に常に注意を払う

贈与を検討する場合は、金額やタイミングに注意しながら早めに計画を立てましょう。また、複雑な場合や大きな金額を考えている場合は、贈与や相続に詳しい専門家に相談することをおすすめします。

マネキン

孫への教育資金の贈与は、家族の絆を深め、次世代の成長を支援する素晴らしい方法だニャ。


マネ娘父

勉強になったよマネキン。自分たちの生活も大切にしながら、家族にとって最適な贈与計画を立てていこう!


マネ娘母

そうね。きっと孫ができたら溺愛して、お財布もゆるくなっちゃいそうだわ。


マネ娘父

贈与するお金より、日々使うお金が増えそうだな!はっはっはっ!


マネキン

だから自分たちの生活も大切にしてニャ〜!

 

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執筆者:三原 由紀
三原 由紀

プレ定年専門FP®️
公的保険アドバイザー、相続診断士子供の小学校入学を機に保険代理店でパート開始し、FP資格を取得。現在は、定年後の生活設計を専門とするプレ定年FP®️として50代会社員に特化した個別相談、執筆を中心に活動。書籍『書けば貯まる! 今から始める自分にピッタリな老後のお金の作り方』『定年後に後悔しないお金の大正解100
ウェブサイト:https://ara50fp.com/