【子どもの扶養】共働きの場合どちらに入れるべき?年収アップや転職の際は要チェック!
前回は、共働き夫婦の節税対策についてお話ししました。
・共働き夫婦は税金で損?お得?節税対策で大きく手取りも変わる!
今回はその節税対策の中でご紹介した「子どもを扶養に入れる」について深掘り!
片方が自営業の場合や、夫婦で年収に大差がない場合など、どちらの扶養に入れた方がお得になるか迷いやすいケースや、扶養に入れる際の注意点まで、シミュレーション付きでわかりやすく解説します。
確か子どもを扶養に入れると、税金を減らしやすいんだっけ?
そうニャ!所得税や住民税を減税できる「扶養控除」の制度に加えて、社会保険には「扶養」という仕組みがあるから、会社員や公務員なら養っている子どもの健康保険料はかからなくなるニャン!
でも、僕とマネ娘はそれぞれ違う健康保険組合の保険証を使っているよね。子どもはどっちの健康保険に入れても同じなのかな?
共働きの場合、「子どもはどちらの扶養に入れるか」で、負担が変わることがあるニャ!現在は、夫婦共働き世帯が専業主婦世帯の2倍以上(※)と、夫婦とも収入があるケースが増えているニャン。だから今回は、いろんなケースでどちらの扶養に入れるとお得になるかの判断基準や、税額の比較シミュレーションを紹介するニャ!
参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構 「早わかり グラフでみる長期労働統計 図12 専業主婦世帯と共働き世帯1980年~2023年」より
・子どもを扶養家族として申請することで「社会保険(健康保険)上の扶養」と「税法上の扶養」でお得になる仕組みがある。
・共働きの場合、通常子どもは母親か父親のどちらかの扶養家族になり、夫婦どちらの扶養に入れるか決まっていることもあれば、選べることもある。
・選べる場合、家庭の状況に合わせてなるべくお得になる選択をする。
・年収アップや転職、退職など、状況が変わる際に「子どもの扶養はどちらに入れたほうが良いのか」を考えるようにする。
・2020年に新設された、子どもがいる親が使える税制優遇制度「所得金額調整控除」は、条件を満たしていれば夫婦どちらも申告可能。
目次)
1.子どもを扶養に入れるメリットと条件
1-1.子どもを扶養に入れるメリット
1-2.子どもを扶養に入れる条件
2.「どちらに入れても同じ」ではない!家庭の状況で変わる!
2-1.健康保険の扶養は「収入が高いほう」が基本
2-2.健康保険の扶養を選べるなら「会社員・公務員」「福利厚生が手厚い」ほうがお得
2-3.税法上の扶養は「年収が高い親」がお得
3.控除額ケース別シミュレーション
3-1.扶養控除による減税額は?
3-2.会社員の夫・年収500万円、会社員の妻・年収300万円の場合
4.子どもを扶養に入れる際の注意点は?
4-1.年収などが変わったときに注意!
4-2.扶養を付け替えるときの手続き件
4-3.「所得金額調整控除」は夫婦どちらも使える
1.子どもを扶養に入れるメリットと条件
扶養とは、経済的に自立していない家族や親族を援助することをいいます。日本では、子どもを扶養家族として申請することで、お得になる仕組みがあります。大きく分けると、「社会保険(健康保険)上の扶養」と「税法上の扶養」の2つです。
子どもを扶養に入れるメリット
子どもを扶養家族にするメリットは、それぞれ次の通りです。
・社会保険(健康保険)上の扶養
社会保険上の扶養とは、俗に、会社員や公務員が加入している健康保険などの扶養制度を指します。社会保険上の扶養に入った扶養家族は、健康保険料の負担がなく健康保険を使うことができます。加えて、加入した健康保険の福利厚生サービス(保養所の利用など)も使えます。
なお、自営業者などが加入する国民健康保険には扶養の概念がないので、子どもも健康保険料が発生します。ただし、減額制度によって未就学児は保険料が抑えられる仕組みがあります。
なるほど。公務員や会社員のように社会保険(健康保険)に加入していれば、扶養家族の健康保険料は発生しないんだね!
・税法上の扶養
税法上の扶養とは、住民税と所得税の「扶養控除」のことを指すのが一般的です。扶養控除とは、納税者に子どもや一定収入以下の配偶者・親族がいる場合に、一定の金額が所得から控除される制度のこと。扶養控除が適用されると課税対象となる所得が減るので、所得税・住民税として納める金額を減らすことができるのです。
社会保険(健康保険)上の扶養のメリット
・子どもの健康保険料がかからない
・子どもも福利厚生が使える(保養所の利用など)
※国民健康保険は未就学時の健康保険料が減額
税法上の扶養(扶養控除)のメリット
・親の所得税の負担が減る
・親の住民税の負担が減る
ちなみに、扶養を受ける人(=扶養家族)は、社会保険上では「被扶養者」。
税法上では「扶養親族」と呼ばれるニャ。
子どもを扶養に入れる条件
社会保険上の扶養も、税法上の扶養も、子どもが扶養家族になれる条件がそれぞれ定められているニャ!
・社会保険(健康保険)上の扶養の条件
健康保険に所属している親と同一世帯である子どもの場合、扶養控除を受けるためには、収入要件などを満たす必要があります。協会けんぽ(全国健康保険協会)の場合、被扶養者として認定される条件として次のように定められています。
・原則として、被保険者(=その健康保険に所属している親)の年間収入の2分の1未満
※…60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満
子どもでも、ある程度収入があったら扶養家族になれないの!?大学生とかで、たくさんアルバイトする場合は気をつけないと!
・税法上の扶養の条件
子どもの場合、扶養控除を受けるためには次の条件をすべて満たす必要があります。
・納税者と生計を一にしている
・年間の合計所得金額が48万円以下(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
・青色申告者の事業専従者として給与の支払を受けていないこと
・白色申告者の事業専従者でないこと
一緒に住んでいれば、基本的には「生計を一にしている」とみなされます。子どもが寮生活や1人暮らしをしている場合、親が単身赴任の場合も、生活費や学費を負担している状態なら、生計は同じといえます。
16歳未満の子どもは扶養控除の対象外だけど、児童手当の支給があるニャ!
年齢上限は特にないということは、子どもが16歳以上なら、条件さえ満たせば何歳まででも扶養控除の対象になるんだね!
2.「どちらに入れても同じ」ではない!家庭の状況で変わる!
共働きの場合、通常子どもは母親か父親のどちらかの扶養家族になります。夫婦どちらの扶養に入れるか決まっていることもあれば、自分で選べることもあります。
選べる場合は、できればお得になる選択をしたいニャ!
子どもを扶養に入れるときに知っておきたいことを紹介するニャン。
健康保険の扶養は「収入が高いほう」が基本
社会保険上の扶養は、子どもは収入が高いほうの親の扶養に入れるのが基本となります。
例えば、片方が会社員(=会社の健康保険)で、片方が自営業者(=国民健康保険)の場合、会社の健康保険に入れれば子どもの健康保険料がかからないのでお得です。
しかし、「お得だから」という理由で、収入が低いほうの親の扶養に入れることはできません。
「夫婦の年収の差が1割以内」といった条件を満たしたときに限り、自由に選べます。
詳細は、厚生労働省の「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について」の通知に記載されています。
健康保険の扶養を選べるなら「会社員・公務員」「福利厚生が手厚い」ほうがお得
夫婦の年収が同じくらいで扶養に入れる先を選べる状況なら、子どもの健康保険料が発生しない「会社員・公務員(=社会保険に加入)」の親の扶養に入れましょう。
もし親が会社員同士(例えばそれぞれが別の会社の健康保険であるなど)なら、どちらに入れても子どもの健康保険料はかからないので差はありません。
ただし、健康保険によっては、「保養所が安く使える」「高額な医療費がかかったときに付加給付がでる」といった形で、独自の福利厚生サービスが充実していることがあります。他にも、扶養手当(家族手当)の支給があったりすると、その支給条件に社会保険上の扶養に入れることが含まれていることがあります。
子どもを夫婦どちらの扶養に入れるか選べる(=夫婦の年収差が1割以内の)場合は、こうした勤務先独自の福利厚生が手厚い健康保険の扶養に入れたほうがお得ニャ!
税法上の扶養は「年収が高い親」がお得
税法上の扶養(=扶養控除)は、夫婦のどちらの扶養にいれるかを、自由に選ぶことができます。16歳以上の子どもを扶養にいれることで、所得税や住民税の納税額を計算するときに所得控除を受けることができます。
所得税は年収が高くなるほど税率が高くなる仕組みなので、子どもは年収が高いほうの親の扶養に入れたほうが、納税額を抑えやすいです。
夫婦間で収入がさほど変わらない場合は、所得税率も同じなことが多いので、どちらの親の扶養に入れても減税額は変わらないことが多いでしょう。
でも、一方だけに扶養控除を適用すると、片方だけ税金の負担が減って夫婦で手取り収入の差が出てきて、ちょっと不公平に感じちゃいそう…。
そのときは、「子どもが2人いるなら、夫と妻でそれぞれ1人ずつ扶養に入れる」「子どもが1人の場合、毎年扶養に入れる親を入れ替える」という手もあるニャ!
3.控除額ケース別シミュレーション
税法上の扶養は自由に選べるんだね!夫婦どちらの扶養に入れるとお得になるのか、わかる方法はある?
所得税や住民税はたくさんの控除制度があるから、正確な数字はそれぞれの状況に応じて試算してみないとわからないニャ。ここでは、概算や、目安になりそうな事例を紹介するニャン!
扶養控除による減税額は?
扶養控除に入れることで、どのくらい税金の負担が減るのかは、扶養控除額(子どもの年齢で変わる)や、納税者である親自身の年収の高さ(=所得税率)によって異なります。
・扶養控除額
扶養控除は扶養親族の年齢などで区分され、控除額が異なります。次の表は、所得税の扶養控除額です。別途、住民税も似たような形で控除額が決められています。
資料:国税庁ホームページをもとに作成
年齢などで控除額が変わるニャ!イメージとしては、高校生や大学院生などは一般の控除対象扶養親族となるので、控除額は38万円だニャン。学費が高い大学生の時期は、控除額が大きくなって、63万円だニャ!
「学生だから」といった理由で控除額が変わったりはしないんだね。浪人したり、大学院に進学した場合も、控除額を大きくしてくれたらいいのに~。
扶養控除は令和7年税制改正で変更する話が出ているニャ!最新情報は国税庁のホームページ「扶養控除」でチェックするニャン!
親や祖父母の扶養については、こちらの記事で詳しく解説しています。
・親を扶養に入れるといくら節税できる?扶養に入れる条件と手続き、最新情報をFPが解説!
・所得税率
自分の所得税率は、自分の年収から、給与所得控除(以下参照)や基礎控除(48万円)、社会保険料控除(支払った実額)、各種所得控除(生命保険料控除、医療費控除など)を引いて出てくる「課税される所得金額」を算出し、所得税率の表(以下参照)と照らし合わせることで確認できます。
マネキン、課税される所得金額を出すのはハードルが高いよ~!
ざっくりした目安でいえば、年収500万円以上だと所得税率は10%くらいニャ。年収700万円前後からは所得税率が20%以上になる可能性が高いニャ。正確な数字が知りたい場合は、頑張って計算するニャン。
出典:国税庁「給与所得控除」より
出典:国税庁「所得税の税率」より
会社員の夫年収700万円、会社員の妻300万円の場合でシミュレーション
扶養控除による減税額の概算方法が分かっても、自分で計算するのは難しく感じるなぁ。どんな場合にどのくらい税額が抑えられるのかを具体的に教えてほしい!
例として、年収700万円の会社員の夫(所得税率が20%の場合)と、年収300万円の妻(所得税率が5%の場合)を紹介するニャ!
<夫の扶養に入れた場合>
計算式:扶養控除額(38万円)×所得税率(10%)
所得税の軽減額の目安:年間7.6万円
<妻の扶養に入れた場合>
計算式:扶養控除額(38万円)×所得税率(5%)
所得税の軽減額の目安:年間1.9万円
この場合は、夫の扶養に入れたほうが、1年間で5.7万円(7.6万円-1.9万円)くらいお得になるニャ!
<夫の扶養に入れた場合>
計算式:扶養控除額(63万円)×所得税率(20%)
所得税の軽減額の目安:年間12.6万円
<妻の扶養に入れた場合>
計算式:扶養控除額(63万円)×所得税率(5%)
所得税の軽減額の目安:年間3.15万円
今度は、1年間で9.45万円(12.6万円-3.15万円)も差が出るんだ。子どもが大学生になる頃は、どっちの扶養に入れるか、特に注意しておかないといけないね!
4.子どもを扶養に入れる際の注意点は?
子どもを扶養に入れることでどのくらいお得になるかは、状況によって変わります。次の点に注意しておきましょう!
年収などが変わったときに注意!
子どもを夫婦どちらの扶養に入れるとお得になるか(または入れるべきか)は、夫婦の年収などによって変わります。そのため、年収アップや転職、退職など、状況が変わる際に「子どもの扶養はどちらに入れたほうが良いのか」を考えるようにしましょう。
「住宅ローン控除で税金が全部返ってきた」「医療費控除で税金がたくさん返ってきた」といった場合は、夫婦の年収が同じくらいなら、所得税の還付を受けていない親の扶養に入れたほうが、お得になる可能性が高いニャ!
扶養を付け替えるときの手続き
社会保険の扶養は、健康保険で管理しています。扶養を付け替えたいときは、夫婦それぞれの加入している健康保険に連絡して、加入や脱退の手続きを進めてください。手続きの時期は基本的には決まっていないので、今後の年収見込みが変わった際などに、適宜手続きを行いましょう。
税法上の扶養については、年末調整や確定申告で申請します。「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出する際、夫婦どちらかだけが子どもを扶養親族として申告しましょう。毎年付け替えることもできます。
もし年末調整が終わった後に付け替えをしたいときは、(付け替え後の)正しい内容で、夫婦ともが確定申告を行えば大丈夫です。
ただし、一度確定申告を完了した後は、もう修正できないので注意するニャ!
「所得金額調整控除」は夫婦どちらも使える
扶養控除とは別で、子どもがいる親が使える税制優遇制度として2020年に新設された「所得金額調整控除」があります。これは、給与年収が850万円を超えている人向けの制度です。23歳未満の扶養家族がいる場合に使えて、最大で15万円の所得控除が適応されます。
扶養控除は夫婦どちらかしか使えない制度ですが、所得金額調整控除は夫婦どちらも申告可能です。給与年収が850万円を超えている人は、忘れずに年末調整時に所得金額調整控除を適応するように申告しましょう!
所得金額調整控除について詳しく知りたい方は、コチラをご覧ください。
子どもの扶養をどっちの親に入れるかだけでこんなにお得さが変わるなんて、知らなかったな〜。正確な所得税率を出すのはちょっと難しそうだけど、頑張ってやろっと!
余分な税金を支払いたくないから、しっかり夫婦で話し合って扶養に入れるほうを決めるようにしたいね!
2人とも、お得だと知ると急にやる気になるニャ。本当、似たもの夫婦だニャン。
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FP事務所マネセラ代表
ファイナンシャルプランナー(AFP)
保険や投資信託などの金融商品を販売せずに、お客様の味方となってアドバイスを行うお金の専門家。共働きや海外転勤がある家庭を中心に、年100件近いペースで個別相談を受ける。専門分野は教育費・住宅購入・資産運用・ママのキャリアなど。コラム執筆や監修、オンライン・動画によるマネー講座などでも活躍中。小学生2人の母でもある。
著書『~共働き800万円以下の夫婦でもハッピーライフ~プチ贅沢を楽しみながらムリなく資産を増やす』(ビジネス教育出版社)