人生の選択肢を増やす「FIRE」「サイドFIRE」「バリスタFIRE」とは?
昨今、転職は当たり前となっただけではなく、週5日働くという考え方にも変化が出てきており、週休3日を希望する人も増え、生き方や働き方が多様化してきています。
こうした変化の中、
「地方に移住してのんびりした生活を送りたい」
「自分の好きなことを仕事にしたい」
「趣味を活かしたお店を開きたい」
など、将来的に“生活のための仕事”から解放されて、自分の理想を叶えた暮らしをしたい人は多いのではないでしょうか。そのような希望を叶えるべく、人生の選択肢に余裕を持つために知っておきたいのが「FIRE(ファイヤー)」という概念です。
FIREってなに?
確か「早期リタイア」と似てる意味合いだよね。できるなら仕事をやめて好きなことをして生活したいけど、生活するにはやっぱりお金が必要だし働かないといけないよね…。
諦めるにはまだ早いニャ!FIREといっても様々な種類やケースがあるんだニャン。FIREを知ることで、ふたりがこの先の人生をどう生きたいか人生の選択肢を広げるきっかけにもなると思うから、FIREの概念について、そして実現するためにはどうすればいいか教えるニャ!
・「FIRE」には「サイドFIRE」「バリスタFIRE」などいくつか種類があり、実現性が高くチャレンジしやすいのは「サイドFIRE」「バリスタFIRE」。
・FIREを実現しようと準備すること自体が、自分のライフプランの見直しになり、人生の選択肢を広げることにもつながる。
目次)
1.人生の選択肢を増やす「FIRE」「サイドFIRE」「バリスタFIRE」とは?
1-1.FIREとは?
1-2.サイドFIREとは?
1-3.バリスタFIREとは?
2.実現するには何が必要?シミュレーションしてみた
2-1.シミュレーション① FIREのケース
2-2.シミュレーション② サイドFIREのケース
3.まずはサイドFIRE、バリスタFIREからの検討がオススメ
4.実現するためのステップ
1.人生の選択肢を増やす「FIRE」「サイドFIRE」「バリスタFIRE」とは?
FIREとは?
FIREとは、“Financial Independence, Retire Early”の各単語の頭文字をとったものであり、日本語では経済的経済的な独立と早期リタイアを意味します。週5日勤務の正社員にしがみつかなくても、投資や貯蓄をもとに経済的に自立ができ、好きなことを行うなど時間にゆとりのある状況を作り出すことがFIREです。
ポイントは、ある程度の資産を構築し、それをもとに経済的な自立ができることニャ。そのため、FIREを実現するためには、資産を構築し早期退職するための綿密な人生設計が必要となるニャン。
綿密な人生計画…、もう実現するのが難しく感じる!
実はこのFIREには、経済的自立と早期リタイアを完全に実現するケースの他に、もう少しチャレンジしやすい「サイドFIRE」「バリスタFIRE」と呼ばれるものがあるニャ。何が異なるのか解説をしていくニャン!
サイドFIREとは?
サイドFIREとは、働くことを完全にやめるのではなく、投資や貯蓄により生活費をある程度カバーしつつ、サイドビジネス(副業)で得られる収入でも生活費をまかなっていくスタイルです。
いわばフリーランスのような形態で働きつつ、自由な時間も得ていく生活です。自分のお店を持ち好きなように働きたいといった方などがサイドFIREを目指す傾向にあります。
バリスタFIREとは?
一方、バリスタFIREとは、パートタイム労働など雇われにより働きつつ、投資や貯蓄をもとに生活費をまかなっていくFIREのスタイルです。
趣味などを楽しみたいものの、フリーランスは向いていない。とはいえ社会とは接点を持ち、多少は収入を得ていきたい。そういった場合には、月に数万円などパートタイムで安定収入を得ながら、投資や貯蓄で生活費をカバーしていくバリスタFIREを目指す方が多いといえます。
「バリスタ」ってカフェとかのバリスタと同じ意味?
「バリスタ」の由来は諸説あるけど、バリスタFIREは主に健康保険に加入する権利を得るためにパートタイマーとして働くスタイルという意味もあるニャ(米国では日本のように健康保険の国民皆保険制度がないため)。
米国ではパートタイマーでも健康保険に加入できる大企業としてスターバックスが有名で、 退職後スターバックスのバリスタとしてアルバイトやパートタイムで働き、配当収入も得て暮らす人のことをバリスタFIREと呼び、その名前が浸透していったことが多く言われてるニャン。
なるほど!
それぞれの概要を見ると、FIREに比べてサイドFIREやバリスタFIREのほうが自分でも実現できそうな印象があるな。
通常のFIREでは完全なる早期リタイアをさすことが多いものの、そのためには多額の資産も必要となります。そのため、そこまで多い資産がなくても自由な時間を満喫したいといった希望のある方々がサイドFIREやバリスタFIREを目指す傾向があります。
2.実現するには何が必要?シミュレーションしてみた
FIREやサイドFIRE、バリスタFIREを実現するためには具体的にどんな準備やライフプランが必要なるのかな?
例として、FIREとサイドFIREを実現した場合のシミュレーションを行ってみるニャ!
シミュレーション① FIREのケース
FIREでは、資産を構築しそれを運用していくことで生活費をまかないます。FIREを実現するためには、1年間の支出額(生活費)の25倍の資産を用意する必要があるとされています。例えば、1年間の支出額が240万円の場合には、240万円×25倍=6,000万円が必要です。1年間の支出額が300万円の場合は7,500万円、500万円の場合には1億2,500万円が必要となります。
なんで25倍なの?
これは、「4%ルール」がもとになってるニャ。4%ルールとは、毎年の支出額を資産の4%未満に収めるというルールだニャン!
もともとFIREはアメリカで生活する場合の考え方からできており、米国株式(S&P500)の1945年から2020年までの年平均成長率が7%であること、その期間の平均物価上昇率が3%であるため、7%から3%を引いた数字、つまり実質的な資産の増加率は年4%だったことに起因します。
資産運用により年4%ぐらいは増やせるだろう。であれば、増やした4%分までで1年間生活できれば保有する資産を減らさずに経済的な自立が図れると考えることができます。
以下に、FIREを実現するための条件をまとめます。
・ご自身・ご家族の1年間の支出額を把握し、その25倍の資産を構築する
・構築した資産を実質的な収益率である年4%ほどで運用を行えるようにしていく
<モデルケース 1年間の支出額が240万円の場合>
・目標とすべき資産は240万円×25倍=6,000万円。
・6,000万円をもとに実質年4%で運用できれば毎年240万円相当の生活費がカバー可能。
・仮に30年間で6,000万円を構築するためには、年200万円の貯蓄、20年間であれば年300万円の貯蓄が必要。
注意してほしいのが、運用で得た利益に対しては原則として約20%の税金が課せられることニャ。最終的に受け取れる金額が減ることも踏まえて準備する必要があるニャン。税金が非課税となるNISAを有効活用するのもおすすめニャ!
通常のサラリーマンの場合、お子さんがいる場合などでは教育費も必要となり、実現はなかなか難しいかもしれません。なお、夫婦共働きのケースであれば、時間をかければ達成可能となるケースも多くなることでしょう。
確かに僕の収入で考えてもこれはなかなか厳しいかもしれない…。
シミュレーション② サイドFIREのケース
サイドFIREでは、通常、生活費の半分を構築した資産をもとにした運用でまかない、残り半分をビジネスで稼ぐスタイルが検討されます。この場合には、1年間の支出額の12.5倍の資産を構築すればよいです。そして通常のFIRE同様、構築した資産を実質的な収益率である年4%ほどで運用を行えるようにしていければ達成可能となります。
・ご自身・ご家族の1年間の支出額を把握し、その12.5倍の資産を構築する
・構築した資産を実質的な収益率である年4%ほどで運用を行えるようにしていく
<モデルケース 1年間の支出額が240万円の場合>
・目標とすべき資産は240万円×12.5倍=3,000万円。
・3,000万円をもとに実質年4%で運用できれば毎年120万円相当の生活費がカバー可能。
あとの120万円をサイドビジネスで稼いでいくことになります。月々に直すとこの場合には月10万円が必要になります。月10万円であれば、好きなことをビジネスにする、週に2~3日働くことでも達成可能といえるのではないでしょうか。
仮に30年間で3,000万円を構築するためには、年100万円の貯蓄が必要。20年間であれば年150万円の貯蓄が必要となります。
FIREに比べると達成しやすい環境だね!
このシミュレーションの通り、会社員の方などで早期リタイアを検討するなら、サイドFIREの方が現実的であり、実現しやすいといえるニャ。
3.まずはサイドFIRE、バリスタFIREからの検討がオススメ
上記のモデルケースを見てもお分かりの通り、FIREはなかなか手が届かないといった方でも、週に何日か働くといったサイドFIREやバリスタFIREであれば、達成できそうとお感じになった方も多いと思います。
サイドFIREやバリスタFIREの場合には、働くことで得られる収入が引き続き存在するため、資産運用だけに頼らず可能なことが大きなメリットです。また、資金は少なめでも可能といった理由の他、仮に資産運用があまり芳しくなかったとしても生計は立てやすいこと、社会との接点を持ちながら自由にもなれる点がメリットといえます。
そのため、今以上に楽しみながら人生を謳歌したいと考える方には、サイドFIREやバリスタFIREを検討されることをオススメします。なお、収入が多く通常のFIREが可能といった場合でも、社会と接点を持ちたいなど何かしらの理由がある場合にも、サイドFIREやバリスタFIREをオススメします。
・完全なFIREよりも現実的
・資金が少なめでも可能
・暴落時のリスクに強い
・マネープランが立てやすい
・社会とかかわりながら自由になれる
4.実現するためのステップ
②現在持っている資産を確認する
③何年計画で実行するかシミュレーションを行う
④実質年4%の運用を行うための資産運用計画を立てる
このように、FIREを実現するためのステップを確認することで、早めにご自身のライフプランと向き合うようになり、資産設計も早め早めの行動をとることができます。その結果、人生の余裕、つまり選択肢を広げることにもつながることになります。
FIREを実現したいと行動することで今以上の人生の選択肢を広げるチャンスに出会えることになるニャ!これがFIREを実現するにあたり大きなメリットとも言えるニャン。
準備を進めていく上での注意点
FIRE を目指す上で注意点はある?
注意点としては以下の点が挙げられるニャ。
・今後も安定した収入を得ることができること
今後のご自身およびご家族の環境の変化により、変動する可能性がある点に注意してください。そのため、少なくともこれだけの収入は得られるであろうという保守的な見積もりをもとにFIREの準備を進めていく方が良いかもしれません。
・資産運用の知識を得て実践し、実質年4%のリターンを得られるようにしていくこと
中長期投資により実質年4%を目指していく必要があります。短期で見れば大きな変動はありえるものの、中長期投資で世界に投資する、米国に投資するといった視点を持ち、年単位でならして考えたときに年4%を実現できるような体制をとっていく必要があります。
完全なFIREを早期に実現することはなかなかハードルが高いものの、サイドFIREやバリスタFIREであれば十分に実現可能ニャ!そして、FIREを実現しようと準備することで人生の選択肢を広げることにもつながるんだニャン。
まずは自分が望む生き方を見つけることが大事だね。改めて、これからの人生について考える時間になったよ、マネキン!
仕事しないで大好きなお菓子を毎日食べて映画を見る生活がしたいな〜。
言うと思ったニャ…。
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一般社団法人資産運用総合研究所 代表理事
伊藤亮太FP事務所代表
スキラージャパン株式会社代表取締役
慶應義塾大学大学院 商学研究科修了後、証券会社にて営業・経営企画部門、秘書業務等を行う。また、投資銀行業務にて携わる。現在、資産運用と社会保障(特に年金)を主に、FP相談・執筆・講演を行なっている。東洋大学経営学部ファイナンス学科非常勤講師2019年発売の監修本として『ゼロからわかる金融入門 基本と常識』(西東社)、著書に『7日でマスターNISA&iDeCoがおもしろいくらいわかる本』(ソーテック社)等がある。
HP:https://www.ryota-ito.jp/