親が元気なうちに決めておこう!実家の処理の方法と、それぞれの費用や注意点を解説!

目次)
1. 実家をどうするか?は、親の生存中に親兄弟で話し合い、検討する
2.実家の処理 いつまでに決める?
3.ケース別に解説!負担の少ない実家の処理方法
相続して売却する
相続してから検討する
相続放棄する
故人の配偶者が健在な場合は?
4.実家の処分にあたり、遺品整理のコツと注意点

 

マネ娘父

この前友人から相談を受けたんだけど、ご両親がもう高齢だから、自宅から遠く離れている実家をどうするか悩んでるみたいなんだ。

マネ娘母

子供の頃に過ごした家を売るのは抵抗があって、どうするか悩んでいる人も多いみたいね。
ケースによっていろいろな方法があるだろうし。
前回もいろいろな相続についてマネキンに教えてもらったし、聞いてみたらどうかしら。

生前贈与と遺産相続、どちらが良い??不動産の相続の節税のコツ
終活で老後の不安も解消!?お金に関わる終活の進め方
いざというときに慌てない!相続を受けるために必要な手続き

マネキン

呼んだかニャ?

マネ娘父

良いところに来てくれた!実家の処理について、どんな方法があるか知りたいんだけど、教えてくれるかな?

マネキン

任せるニャ!実家の相続は、ケースによって利用できる控除や特例制度は多種多様ニャ。
ケース別に負担の少ない適した処理方法や注意点、その際に知っておきたい遺品整理のコツまでを解説していくニャン!

1. 実家をどうするか?は、親の生存中に親兄弟で話し合い、検討する

マネキン

まず、実家をどうするかは親が元気なうちに親兄弟で話し合っておくことが大前提ニャ。
親が亡くなってからだと、時間に余裕がないのはもちろん、兄弟が遠いところにいる場合はなかなか話し合いが進まなかったりするニャ。

具体的に話すべきことは、
・親が亡くなったあとに住むか住まないか
・手放すか土地活用するか
・相続人の分配方法はどうするか
・特例が使えそうか
・活用を検討している特例を使う場合、どんな手続きが必要で、なんの情報が必要か、また、その手続きはいつまでにしなければいけないか
などです。

相続は1年足らずと意外と短い期間で手続きを進めなければいけないため、先に方針を決めておくことで後々のスムーズさが大きく変わります。このあと詳しく解説していきます。

2. 実家の処理 いつまでに決める?

マネ娘父

そもそも実家の処理はいつまでに決めないといけないんだろう?期限はあるの?

マネキン

相続の手続きには期限が定められていて、「相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」に手続きをしなければならないニャ。

マネ娘父

ん? “相続の開始があったことを知った日“っていつ?

マネキン

ストレートに言うと、一般には親が死亡したことを知った日をさすニャン。
例えば、子どもが親の死亡を知ったのが死亡から10日後なら、死亡日の11日目から10ヶ月以内となるニャ。

マネ娘母

ええ…!1年もないのね。早めに取り掛からないと、意外とあっという間に期限がきてしまいそうだわ。

まずは遺言書の有無を確認し、相続人を確定し、相続財産を確認します。遺言書があればそれに従います。
ない場合は、兄弟姉妹など相続人全員で遺産分割協議書に合意し、相続税の申告、納税までを済ませるので、この10ヶ月は慌ただしい日程といえます。

もし、借金などマイナスの財産のほうが多い場合は、相続放棄するほうが良い場合もあります。
この場合は「10ヶ月以内」ではありません。
相続放棄は「相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内」に申請が必要なため、直ちに相続財産を確認しましょう。手続きには時間がかかるため、早めに動き出す必要があります。

マネ娘父

たったの3ヶ月で決めなきゃいけないのか…。相続放棄する場合は、ゆっくり悲しんでもいれないな…。

3.ケース別に解説!負担の少ない実家の処理方法

マネキン

次に実家の処理の仕方について、ケース別に見ていくニャ!

ケース①相続して売却する

実家を相続して住まずに売却する場合は、「早め」に売却するのが税金面からもお得です。
早めとは、「相続開始から10ヶ月後の翌日から3年10ヶ月以内」です。
それについて詳しく見ていきます。

まず、不動産を相続で取得するには、登録免許税・譲渡所得税・復興特別所得税・印紙税がかかります。

マネキン

また、所有期間中にかかるのが固定資産税ニャ。
固定資産税は、毎年1月1日時点で不動産を所有している人にかかるから、住まないのであれば売却することで、固定資産税を支払わなくて済むニャ。もちろん、空き家にしていてもかかるお金ニャン。
前述した「早めの売却」がお得な理由は、これらの税金を軽減できる特例がいくつかあって活用できるからニャ!説明していくニャン。

【譲渡所得税軽減の特例】
・取得費加算の特例
譲渡所得税とは、不動産を売却した際に得た利益(譲渡所得)に対して課税される税金です。
親が自宅を購入した当時の金額より高く売却できた場合に、その利益に対してかかります。
この譲渡所得税の計算において、相続開始から3年10ヶ月以内(相続の申告期限から3年以内)に売却し、譲渡益が発生した場合、相続税のうち一定金額を譲渡所得の取得費として加算できる特例です。

・3,000万円特別控除と空き家の3,000万円特別控除
自宅を売却したとき、譲渡所得の金額から最大3,000万円までを控除できるのが「3,000万円特別控除の特例」です。これは相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却した場合に適用できますが、空き家の発生を抑制するための特例措置として、2023年12月31日までに、空き家となった自宅を相続したときにも適用されます。
ただし、昭和56年5月31日以前に建築された旧耐震の建物が対象で、耐震基準を満たしていない場合は修繕する、更地にして売却するなど一定要件があります。
詳細な要件などは国税庁のHPをご参照ください。

マネキン

譲渡所得税だけでなく、相続税を大幅に軽減できる特例もあるニャ。

【相続税軽減の特例】
・小規模宅地の特例
亡くなった人が住んでいた土地を、一定の要件を満たす人が相続した場合に、相続税を最大80%減額できる特例です。
配偶者や同居親族、生計を一にする親族が主な対象者ですが、実家で親と同居していない人でも使える場合があります。「家なき子」といって第3者所有の賃貸で暮らしていた人がその土地を相続した場合です。
小規模宅地の特例は、配偶者以外においては、「取得した土地を相続税の申告期限まで所有し続ける、居住し続ける」ことが要件です。そのため、相続開始後の翌日から10ヶ月間は売却できません

マネキン

これらの特例のうち、小規模宅地の特例と取得費加算の特例は併用できるけど、取得費加算の特例と空き家の3,000万円特別控除は併用できないニャ。
どの特例とどの特例を使うのが最適なのかはケースバイケースだから、相続専門の税理士に相談するニャン。

なお、子が相続しても実家には住まないことが明白な場合は、親が生前に「3,000万円特別控除」(※2)や「軽減税率の特例」(※3)を利用して売却しておくほうが良いケースもあります。

これらの特例はその家屋に住んでいる人だけが使えるもので、離れて暮らしている子どもは使えませんでした。ところが、平成28年度より、政府の空き家撲滅策の一環として、「相続空き家の3,000万円特別控除」が制度化されました。
昭和56年5月31日以前に建築された家屋(旧耐震物件)で区分所有建築物(マンション)以外の建物などの要件を満たした家屋を解体し売却した場合も「3,000万円控除」を利用できるというものです。
ただし、期限は令和5年12月31日までとなっているので、現在該当しそうな相続空き家をお持ちの方は、早急に専門家にご相談ください。

マネキン

使える特例があるなら絶対に使うべきニャ。
どの特例を利用して相続するのが最適か、生前に売却する場合は、親が元気なうちに、兄弟姉妹なども一緒に十分に話し合っておくニャ。
なかには早めに売却し、そこでできたお金を元手に老人ホーム入居の資金に充てる人もいるニャ。

もし、なかなか思うように売却できない場合、

 ・価格を下げて売却
 ・不動産会社を変える
 ・古家を取り壊して更地にして売却
 ・「買取」で売却
 ・空き家バンクに登録する
 ・賃貸できるような物件なら賃貸物件として有効活用する

などの対策が考えられます。

マネ娘母

売却する場合にはどんなお金や準備するものがいるのかしら?

実家の売却には仲介手数料がかかります。
その他に、登記済権利書または登記識別情報、固定資産税納税通知書、固定資産税評価証明書、土地測量図、境界確認書、建築設計図、工事記録書や、本人の身分証明書、実印、印鑑証明書、住民票などが必要です。
なお、新耐震基準導入(昭和56年5月31日)以前の物件においては、耐震診断報告書などの提出を求められるケースもあります。

マネキン

このように、売却する場合はいろいろな準備があって、必要書類がどこにあるかも親に確認しておく必要があるからこそ、家族との早めの話し合いが大事なんだニャ。

ケース②相続してから検討する

離れて暮らしていた親が急に亡くなると、ひとまず相続してから考えるというケースがよく見られます。
相続すれば固定資産税がかかり、維持管理費も必要です。
コロナ以降リモート勤務になっているので、実家に住み替えようという場合は、名義変更をすれば問題なく住むことができます。

マネキン

もし、将来的に住まない場合は、ケース①のように売却するか、物件の立地や建物次第で、賃貸や民泊などに活用する方法もあるニャ。

マネ娘父

ふむふむ。一旦検討するケースで注意点はある?

マネキン

避けなければならないのは、空き家として放置しておくことニャ!
倒壊や放火の恐れもあるし、手入れを怠ると外観が悪化し近隣へ悪影響を与えることにもなりかねないニャン。

とはいえ、空き家を解体すると更地となり、固定資産税の優遇がなくなり6倍に跳ね上がることから放置しているケースが多くなっているのも現実。
しかし、「空き家対策措置法」により、そのまま放置すれば倒壊、著しく保安上危険となる恐れのあるような場合は「特定空き家」に指定され、50万円以下の過料が発生
それでも改善が見られないと強制執行で解体され、固定資産税の優遇措置も適用不可と厳しくなりました。
空き家にならないような方法を検討しましょう。

ケース③相続放棄する

親の資産の全容を確認し、借金などマイナスの財産のほうが多い場合は、相続開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に、家庭裁判所に「相続放棄」や「限定承認(※)」の手続きをします。
※限定承認とは、借金などマイナスの財産を清算し、プラスの財産が余ればそれを相続するもの

マネキン

覚えておいてほしいのは、親の借金から解放され、相続の揉め事に関わらなくて済むけど、一度相続放棄の手続きをすると撤回はできないことニャ。
受取人として指定されている生命保険の死亡保険金は受け取れるけど、相続税は発生し、相続税の非課税枠も使えないニャン。

なお、実家などの不動産を公平に分けようと「共有名義」にするケースがあります。しかし、
・共有者全員の同意がないと売却や活用ができない
・手間がかかる
・維持管理や固定資産税の支払いなどの費用でもめやすい
・新たな相続により、さらに持ち分が複雑になる
など、トラブルが起きやすくなります。共有名義は避けるのが良いと言えるでしょう。

マネ娘父

ちなみに、万が一、相続放棄の意思があったものの手続きが3ヶ月の期限を過ぎてしまった場合は、相続放棄はできなくなるのかな。

マネキン

どうして遅れてしまったかを正直に話し、熟慮期間※の伸長(延長)の申し立てを行うと、「やむ負えない事情がある」と判断された場合には相続放棄が認められるケースがあって、もし、家裁で相続放棄の申し立てを却下された場合には、2週間以内に即時抗告することも可能ニャ。

※相続方法を選択できる期間のこと

ただ、申し立てを行うことは可能ですが、最終的には家裁で判断された結果に従うことになります。
ですので、マイナス資産のほうが多く、相続放棄する意思が明確な場合は、どのような手続きをいつまでにしなければならないかを必ず把握しておきましょう。

ケース④故人の配偶者が健在な場合は?

父親が亡くなり母親が健在な場合は、母親が実家を相続して住み続けるのが一般的です。しかし、
・遺産に占める不動産の割合が大きく、家を相続すると預貯金の相続分が少なくなることから生活費が不足し、自宅を売却が必要なことも
・母親が認知症になると法律行為ができなくなり、介護施設への入居資金を得るために自宅を売却したくてもできない
・母親が亡くなると再び相続登記が必要で、再度費用がかかる
というデメリットもあります。

マネキン

そこで、2020年4月に、夫婦の一方が亡くなった場合、残された配偶者が無償で済み続ける権利を保障する「配偶者居住権」が施行されたニャ!

これは、自宅を「配偶者居住権」と「所有権」に分けて相続するもので、法定相続の範囲内で住まいと生活費に充てる預貯金をバランスよく取得できるようになり、自宅を手放すリスクが低減しました。

しかし、配偶者居住権はあくまで「家に住む権利」のため、配偶者には売却する権利はなく、もし、老人ホームに入居する資金を得たいとなっても、配偶者が自宅を売却することはできません。
また、子供側から見れば、所有権を相続したため、親が住む家の固定資産税を支払うことになります。

マネ娘父

配偶者居住権には、自宅を手放すリスクは低減するものの、こんなメリット、デメリットがあるのか。
一人ひとりによって利用したほうが良いかどうかが異なってくるんだな…。

実家の相続に関しては、インターネットなどでいろいろと調べることができます。
もし自分だけでは決め切れない、もしくはわからないときは、専門家に相談してみるのもよいでしょう。
有料、無料を問わず、相談に乗ってくれる専門家はたくさんいますが、最後のところまで無料というわけではありません。どういうコンサルを受けたいのかを整理し、まずは市役所・区役所の無料相談を利用しましょう。

マネキン

そこで、このあたりの重点サポートを受けたいと方向性が定まれば、その分野に強い専門家に無料相談を受け、納得のいく回答を得られるようなら、本格的にコンサルを進めていくのがオススメニャ。

4.実家の処分にあたり、遺品整理のコツと注意点

マネ娘父

実家の処理を進めるにあたって、遺品整理もしなきゃいけないと思うんだけどコツはある?

マネ娘母

遺品整理の中には、捨てていいのか捨てちゃダメなのかわからないものも出てきそうよね。
それに思い出の品も出てきて、なかなかスムーズに進まなそう…。

マネキン

その通りで、親が亡くなると、実家の遺品整理が必要になるけど、始めるタイミングや方法は人それぞれニャ。

終活で老後の不安も解消!?お金に関わる終活の進め方

法的な手続きが必要なものや相続税がかかるものは早めに、また賃貸物件に住んでいた場合は、家賃や部屋の明け渡しの関係もあり、ゆっくりしてはいられません。
あとからもめごとにならないように、親族と相談しながら進めることが大切です。
必要なものと不要なものに分け、不用品は処分していきますが、時間的、体力的に難しそうならプロに依頼しましょう。インターネットで「遺品整理 会社(業者)」などで調べるとたくさん出てきます。

例)
メモリーズ
遺品整理プログレス
遺品整理ネクスト
みんなの遺品整理

遺品整理士の資格を有し、対応が丁寧で、料金相場が妥当な遺品整理業者に見積もりを依頼し、その工程で信頼できそうな業者かどうかを見極めることが大切です。

マネキン

実家の処分はケースバイケースニャ。
自分の場合に最適な処理方法はどういう形なのかを見定め、家族と協力しながら準備を進めていくニャン。

マネ娘父

今回実家の処分についてケース別に適した方法を知れてよかった!
相談をしてきた友人にも伝えるよ。

マネ娘母

私たちもいつかこの家をどうするか決めなきゃいけないタイミングがくるから、早めにマネ娘と話しておきましょうね。

マネ娘父

そうだな。うーん、でもこの家にはママとたくさんの思い出があるから、いつか離れることを考えると悲しい…!ううっ。

マネ娘母

ふふ。お父さんったら。

 

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執筆者:岡本 典子

FPリフレッシュ代表。シニアライフを安心して暮らせる高齢者施設・住宅への住み替えコンサルに特化した独立系ファイナンシャルプランナー(CFP、1級FP技能士)。セミナー講師・講演や執筆、監修も行う。著書に『イザ!というとき困らないための 親の介護と自分の老後 ガイドブック』(ビジネス教育出版社)、『後悔しない 高齢者施設・住宅の選び方』(日本実業出版社)がある。
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