親の介護はある日突然に!介護の種類と費用を知っておこう

親が高齢になると心配になってくるのが介護問題。子どもがいればちょうど学費がかかる時期なのに、介護のために仕事を辞めざるを得ない介護離職が2019年の1年間で約10万人もおり、いまだ解消されない社会問題でもあります。(厚生労働省「雇用動向調査」2019年より)

実は約3割が脳卒中や骨折などで急に介護が必要な状態になるなど、介護は「ある日突然」やってくる可能性も高いのです。そんなときに困らないためにも、どんな準備が必要か今から具体的に考えておきましょう。

<目次>
1.介護は大きく分けて2つ

  1. ①在宅介護
  2. ②施設介護

2.在宅介護と施設介護それぞれどのくらい費用がかかるのか?

  1. ①在宅介護
    住宅リフォームなどの一時金と毎月かかる費用
  2. ②介護施設別費用
    サービス付き高齢者向け住宅(食事なし)
    サービス付き高齢者向け住宅(食事つき)
    グループホーム
    介護付き有料老人ホーム

3.介護費用は原則親自身のお金・資産で
・1人当たり300万円~500万円の準備を
・介護離職はできるだけ避けて

4.今から準備できること、しておくこと

  1. ①兄弟姉妹や親自身と介護についてゆるく話し合っておく
  2. ②家族とも話す
  3. ③医療・介護の資金の準備
  4. ④認知症や意識不明になった場合の財産管理の準備
  5. ⑤子どもの側も公的介護保険制度について学んでおく

介護のパターンは大きく2つ、在宅介護と施設介護がある

マネ娘母

私たちももう60代だし、いつかは介護を受けることになるんだなーって最近考えちゃうのよね。夫婦どちらかが元気なうちは良いけど、いつどうなるかわからないし…。

マネ娘父

ママ!そんなこと考えるなんてまだ早いんじゃないか?僕だってまだまだ元気だぞ。

マネ男

そうですよ。お母さん、介護なんてまだ早いですよ!

マネキン

いやいや、ママの心配はとても大切ニャ!パパやマネ男がまだ早いって思うのもわかるけど、早くから考えるに越したことはないのが介護ニャ!

マネ娘

そうだよね。いずれは考えないといけない問題だから今のうちから考えておく必要があるんだね。そもそも介護ってどんな種類があるんだろう?

介護の種類は、
・自宅に住みながら家族や専門家の介護を受ける『在宅介護』
・施設で専門家による介護を受ける『施設介護』

に分けられます。

2025年には、団塊の世代が「後期高齢者(75歳以上)」になり、「大介護時代」に突入します。日本人の5人に1人が75歳以上になり、首都圏を中心に深刻な医療施設や介護施設の不足に陥ると見られていて、有料老人ホームに入れる資金を準備できなかった場合の選択肢は在宅介護が中心になります。

マネキン

介護保険施設の「特別養護老人ホーム」にかかる費用は月5万~20万円程度だけど、原則、要介護認定の要介護3以上でなければ入れないニャ。それでも入居を待っている人が要介護3~5の方で29万人(2019年時点)もいるニャ。

※要介護認定についてはこちらをご覧ください。

在宅介護と施設介護それぞれどのくらい費用がかかる?

では在宅介護と施設介護、それぞれ費用面ではどのくらい違うのか見ていきましょう。

<在宅介護>
こちらは生命保険文化センター「生命保険に関する実態調査(平成30年)」で、過去に介護を経験した人へのアンケート結果です。

在宅介護でかかった費用のうち、
「一時的な費用(住宅リフォームや介護用ベッドの購入費用など)」の平均は67.2万円。
「毎月かかる費用」の平均は4.6万円でした。
「介護が必要となる期間※」は平均54.5ヶ月のため、単純計算をすると、在宅介護でかかる介護費用の平均は約318万円となります。
※「介護が必要となる期間」は在宅・施設混合データです

初期費用672万円+月4.6万円×54.5ヶ月=317. 9万円

<施設介護>
高齢期に利用できる施設にはいろいろなものがありますが、明治安田生命グループの「MY介護の広場」によると、全国平均は以下の表のようになっています。

マネキン

「サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)」は安否確認や生活相談ができるバリアフリーな賃貸住宅で、要介護になった時は在宅介護とおなじで介護費用が発生するニャ。「グループホーム」は認知症の人が対象の共同生活の施設で、「介護付き有料老人ホーム」は介護サービスが付いた有料老人ホームのことニャン!

データを参考にしながら、最初に紹介した「特別養護老人ホーム」を加えて、前出の平均要介護期間54.5ヶ月で試算すると次のようになります。

*特別養護老人ホームは低年金でかつ金融資産1000万円未満の場合には、食費や居住費が軽減される制度もあります。

サ高住は介護費が別途かかるため、在宅介護で毎月かかる費用平均7.8万円×54.5ヶ月分を加えています。

マネ娘母

こんなに費用がかかるのね!貯金足りるかしら…

マネキン

上記以外にも介護に通う場合は交通費などもかかることを忘れないでニャ。それに、見てきた試算はあくまでも平均だから、介護は長期化すれば10年を超えるケースもあって、そうなるとかかる費用は2倍近くになる可能性もあるニャン。

他にも子ども側が介護に関わる場合、様々なケースが考えられます。
・もともと同居していて在宅介護
・在宅介護の親もとへ月に数回通う
・有料老人ホームに入所した親に月1回程度会いに行く
・自分のもとへ親を呼び寄せる
・自分が仕事を辞めて実家で同居介護する

マネキン

親の要介護度や認知症の有無、自分の家族の状況を加味してできる方法を選ぶニャ。たとえば、
・会社員で、「月数回通う」ことで休日が全くない生活が本当に可能か?
・介護をするには近居か同居がベターだけど、仕事を辞めて実家近くに家族で引っ越せるのか?
などを考えるニャ。最善は無理でも次善の策を練るしかないニャ。

マネ娘

自分の家庭も守りながら、親の支援をすることは簡単ではないよね。

マネキン

その通りニャ。親の介護で共倒れにならないように注意が必要ニャ!

介護費用は原則親自身のお金・資産で

親の介護費は原則、親のお金や資産(住宅も含む)でまかなうのが基本とされています。そのため、親に医療・介護の予備費として、1人300万~500万円を用意しておいてもらうよう、タイミングを見ながら伝えておくと良いでしょう。たとえば、ほかの資金と分けて、専用の通帳を用意しておいてもらうのも良いかもしれません。

民法では生活に困窮する親族を扶養しなければならないとされています。ただし、自分の親や兄弟姉妹に対する扶養義務は、配偶者や子より弱いとされ、「余力がある範囲」にとどまるとされています。

マネ男

そうは言っても、親孝行のためにも支援はしたいって思うよ…。

マネキン

気持ちはわかるけど住宅ローンや子どもの教育費を支払いながら親の介護費まで支援したり、仕事を辞めて介護に専念できる人はそう多くはないニャ…。もちろん、最後は自分が後悔しない方法を選択するしかないから、よく考えるニャ。

むしろ、親の介護で離職するなど、自分や家族の未来を犠牲にして良いのかを考える必要があります。その場合、機会費用(本来であれば得られたはずの収入)は数千万円になるケースもあることでしょう。政府も、介護で仕事を辞めないことを打ち出しています。

介護休業制度など、介護離職をしないための方法などは下記で確認してください。
参照:厚生労働省「仕事と介護の両立~介護離職を防ぐために~」

マネ娘父

うーん、僕たち夫婦2人合わせて600万円から1,000万円か…。あんまり趣味にお金を使いすぎてたらダメだな。

マネ娘母

そうね。できるだけマネ娘たちに負担をかけないように私たちもしっかり準備しておかないと。

今から準備できること、しておくこと

介護にあたって実際にどんな準備が必要か?親が60代~70代になって老いを感じたら、次のようなことをしておきましょう。

1.兄弟姉妹や親自身と介護についてゆるく話し合っておく
・親に要介護状態になったときにどうしたいのかゆるく聞いておきましょう。例えば在宅か施設かどちらを希望するのか。子どもたちが離れて暮らしている場合は近居・同居をするために親か子どもが引っ越すのかどうかも重要です。
兄弟姉妹で役割分担を話しておきましょう。誰かが同居・近居をしている場合でも、同居をしない兄弟姉妹は経済的支援をするなど、偏らないように分担をすると良いでしょう。

2.家族とも話す
・配偶者や自分の子どもとも話して協力してもらえるようにしておきましょう。
・同居や近居、離職などは配偶者や子どもの了解が必要です。

3.医療・介護の資金の準備
・医療・介護の資金としてできれば、300万~500万円を準備しておいてもらいましょう。
加入している保険の情報を家族で共有しておくことも忘れずに。

4.認知症や意識不明になった場合の財産管理の準備
・印鑑や通帳、カード、保険証券、家の登記済権利証など資産に関する保管場所や暗証番号などを親が公開するなら家族で共有を。
・財産に関して公開しない親の場合は、資産簿や自分の人生の終末について記したノート「エンディングノート」などに必要な項目を書いておいてもらい、もしもの時にわかるようにしておきましょう
・自宅を売却して施設に入る可能性があるなら、認知症になる前に家族信託(自分の老後や介護等に備え、保有する不動産や預貯金などを信頼できる家族に託す手続き)なども検討を。

5.子どもの側も公的介護保険制度について学んでおく
・いざというときは地域包括支援センターに連絡しましょう。
・公的介護保険制度を学んでおくと役に立ちます。
厚生労働省の資料をご覧ください。
・親の住んでいる自治体のサイトで、独自のサービスを調べてみましょう。緊急ボタンの貸し出し、安否確認のために弁当を宅配してくれるサービスなど自治体でいろいろありますよ。

マネキン

親の介護の問題はある日突然やってくるかもしれないから、親が元気なうちに、親との話し合いはもちろん、兄弟姉妹、配偶者や子どもとも話し合うことが大事ニャ。

マネ娘

せっかくママが気にしてくれたからこの機会にしっかり考えてみよう!

マネ娘父

思った以上にお金もかかるし早めに考えておくべきだな。きっかけを作ってくれてありがとうママ!

マネ娘母

私は詳しく知ったらさらに不安になってきちゃったわ…。

マネ娘

大丈夫!いざママやパパの介護が必要になっても大丈夫なように、私たち夫婦も無駄使いはやめて余力がある状態にしてくから!ね、マネ男!

マネ男

任せてください!それに、せっかくなので僕も両親と話してみるよ!

マネキン

マネ男が珍しく積極的だニャ!?その勢いを忘れないでほしいニャン!

 

豊田眞弓
FPラウンジ代表
ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー、相続診断士。
マネー誌等のライターを経て、94年よりFPとして活動。相談業務や講演、マネーコラム執筆などで活動。ハッピーで持続可能な家計の実現をサポート。子どもマネー総合研究会会長、親の介護・相続と自分の老後に備える.comを主宰、大学や短大で非常勤講師も務める。著書に、「親の入院・介護が必要になるとき いちばん最初に読む本」(アニモ出版)など多数。趣味は講談、投資。
http://happy-fp.com/