自然災害への備えは足りてる?お金の準備と知っておきたい公的制度
目次)
1. 災害で被害を受けたときの修理費用
2. 今からできる、お金に関わる4つの準備
① 火災保険の見直し
② 地震保険の加入
③ 加入する火災共済の確認
④ 緊急資金を持っておく
3. 災害前、被災後に活用できる公的制度
① 地震保険に加入すると受けられる所得控除
② 地震に備え住宅を耐震化する際に利用できる助成制度
③ 災害で家が壊れたときに利用できる制度
4. お金以外にもやっておきたい災害への備え
① 防災グッズの備え
② 現金や貴重品の備え
③ 家の外での備え
④ 新型コロナウイルス感染拡大への備え
日本って災害大国って言われるよね。特に最近、台風や集中豪雨などの被害が全国あちこちで起きていて、ちょっと心配だな…。
確かに最近、防災を身近に考える人が増えてきたニャ。
防災用品なら一応準備してあるつもりなんだけど…。
でも、被害にあった時どのくらいお金が必要になるか、とか、災害に備える保険の必要性、生活再建のために利用できる公的制度については知ってるかニャン?
えー!?ぜんぜん知らないよ。
安心するニャ!今日は災害に備えるお金のことや公的制度などについて解説するニャ!
災害で被害を受けたときの修理費用はどのくらい?
災害が起きて自宅が被害にあったら修理費が必要になるよね?家の修復ってどれくらいの費用が必要になるの?
被害のケース別に見ていくニャン。
○ケース1:屋根が壊れる
台風や竜巻の襲来、大雪などで屋根が壊れることがあります。
・瓦が飛ぶなど部分的な修理になる場合:15万円~30万円
・屋根がはがれて全体的に修理が必要な場合:60万円~350万円
※屋根材や修繕範囲によって費用は変わります。
○ケース2:窓ガラスが割れる
暴風による物の飛来、打ち付ける雹(ヒョウ)、落雷の衝撃などで窓ガラスが割れることがあります。
・窓ガラスの交換:1枚2万円~5万円
※ガラスの種類によってかかる費用は異なります。
○ケース3:外壁が壊れる
大きな地震、台風による飛来物、集中豪雨や土砂崩れなどで外壁が壊れることがあります。
・外壁の修復:1万円~50万円
※壁材の種類、修復の範囲によってかかる費用は異なります。
部分的な修理なら生活費で賄えるかもしれないニャ。
でも、大きな被害を受けた場合は修復にかかる費用が高額になるから、費用の捻出に困ることがあるかもしれないニャ。
住宅の修復だけじゃなくて、家が壊れたことで家の中にも被害が出て、家電製品や家具の買い替えが必要になる場合もあるよね。
※ご紹介した費用はあくまでも目安です。実際の修理費は依頼する会社へご確認ください。
今からできる、お金に関わる4つの準備
自然災害はいつ起こるかわかりません。そして、災害にあったときに必要になるものといえばお金です。いざ災害にあったときにお金で困ることがないよう、今からできる準備をしておきましょう。
その準備としてできることを4つ紹介するニャ!
【その1:火災保険の見直し】
自然災害で被害にあったとき、経済的な助けとなるのが「火災保険」です。火災保険は、火事だけでなく、火事以外の損害でも補償してくれます。
火災保険の補償範囲は以下の通りです。
火災、落雷、破裂、爆発、風災、雹災、雪災、水災
火災保険では、台風や集中豪雨、洪水、落雷、豪雪、雹などの自然災害で損害を受けた場合に、損害保険金を受け取ることができるニャ。
ただ、1つだけ見直しておきたいことがあるニャ。それは補償対象の設定ニャ!
火災保険では、補償対象を
1.建物のみ
2.家財のみ
3.建物+家財
の3つから選んで加入します。
ここで確認しておきたいのが、現在加入している火災保険の補償対象です。災害で窓ガラスが割れたり、屋根や壁が壊れたりして、家の中にある家電製品や家具などにも損害が及んだ場合、補償対象が「建物のみ」になっていたら家財への損害は補償されません。
家電製品や家具の買い替えにはまとまったお金が必要になるから、家財の損害にも備えておきたい場合は、「建物+家財」に設定しなきゃいけないのね!
また、火災保険の保険金は実損払いです。実際の損害額しか支払われません。そして、受け取れる保険金はあらかじめ設定した保険金額が上限となります。保険金額を設定するときは、「新価」または「時価」で設定しますが、新価で契約されることをおすすめします。
「新価」と「時価」ってなんだ?
新価は、同等のものを建築あるいは購入した場合に必要となる金額のことニャ。
時価は、同等のものを建築あるいは購入した場合の金額から、経年劣化した分を差し引いた金額ニャ。時価で契約をすると、損害額の全額が補償されない場合があるので注意するニャン!
【その2:地震保険の加入】
自然災害に対応している火災保険ですが、地震や噴火、津波による損害は補償の対象外となります。日本は地震大国ともいわれることから、地震の補償も確保しておいたほうがよいでしょう。そこで、加入しておきたいのが地震保険です。地震保険に加入していれば噴火や津波も対象になります。
でも地震保険は単独では加入することができなくて、火災保険に加入した上で、地震保険を契約することになっているニャ。
すでに火災保険に加入していれば、途中からでも地震保険に加入できるから、地震保険に未加入の場合は加入を検討するニャ!
地震保険は単独では加入できないのは知らなかったなぁ。
また、地震保険の保険金額は、火災保険の30~50%の範囲で設定し、建物は5,000万円、家財は1,000万円が上限となります。ここで注意したいのは、地震保険の保険金は、「全壊」「大半壊」「小半壊」「一部損」に該当しないと保険金が支払われない点です。全壊の場合は保険金額の100%、大半壊は60%、小半壊は30%、一部損は5%が支払われます。地震保険では、保険金額の全額が補償されない場合があることを頭に入れておきましょう。
【その3:加入する火災共済の確認】
火災保険よりも保険料が割安になることから、火災共済に加入している人もいるでしょう。ただ、火災共済は補償が最小限で、自然災害への補償は低く設定されています。また、火災共済では地震保険に加入できません。
共済組合によっては、自然災害共済のあるところや地震特約が付けられるところもあるから、火災共済に加入している場合は、自然災害への備えを確認しておくニャ!
【その4:緊急資金を持っておく】
気になったんだけど、火災保険や地震保険に加入していても、保険金の上限があったり、補償対象の条件があったりするから、保険金だけだとカバーしきれない場合もあるよね?
するどいニャ!確かに災害による経済的リスクをカバーできないことがあるニャ。例えば、
・住宅ローンが残っている場合、家が全壊となってもローンの支払いだけは残る。
・地震保険に加入していない場合、地震や噴火によって自宅が火事になっても、それは補償対象外となる。
・地震保険に加入していても、損害の程度が一部損に満たない場合は補償されない。
このように、保険でカバーできない部分を補うための「緊急資金」を準備しておくことも大切な備えニャン。
緊急資金の金額は、目安としてできれば半年分、最低でも3ヶ月分の生活費を準備しておきたいです。もし自然災害で被害にあったら、なるべく早く元の生活環境に戻したいですよね。緊急資金があれば、保険でカバーできない部分も早めに手をつけやすくなるなど、災害時にお金が必要になったときにあらゆる面で利用することができます。
まさかの事態に備える生活防衛資金についてはこちらでも解説しているので、ご覧ください!
突然の収入減!まさかの事態に備える「生活防衛資金」はいくら必要?
ときどき火災保険を不要だと考える方もいますが、火災保険は通常の火災による補償が受けられます。例えば、隣家が火事になり、自宅がもらい火で延焼した場合、失火責任法という法律により隣家の保険で賠償してもらうことはできません。自分が加入する火災保険で対応するしかないのです。
もしもの場合の経済的リスクを助けてくれるのは、保険や貯蓄、そして公的制度の知識です。どんなときでも日常生活を守るために、リスクを減らすための方法を考えて、実行されることをおすすめします。
災害前、被災後に活用できる公的制度
災害に備えて保険に加入したり、家を改修したりしたときとか、災害にあったときは行政からの助成を受けられるニャ。
災害前、被災後に活用できる公的制度を紹介するニャ。
地震保険に加入すると受けられる所得控除
地震保険に加入している場合、その掛金の一定金額が所得控除となる「地震保険料控除」が利用できます。地震保険料控除の控除額は、所得税は最大5万円、住民税は最大2万5,000円です。
地震保険料控除の手続きは、会社員の場合は年末調整で行うから、10月頃に損害保険会社から届く「地震保険料控除証明書」を会社へ提出するニャ。
自営業者やフリーランスの場合は、確定申告で手続きをするニャン。
地震に備え住宅を耐震化する際に利用できる助成制度
日本での戸建て住宅の主流は木造住宅です。そのため、地震で住宅が倒壊したり火災が起きたりして、避難に支障が出ることが懸念されています。そこで各自治体では、令和7年度末を目標に「耐震改修促進計画」を進めているところです。
その中で「木造住宅の耐震化支援」として、以下のような助成が実施されています。
・耐震診断の助成
昭和56年5月31日以前に建てられた木造の戸建て住宅の簡易耐震診断を無料で実施。
精密な耐震診断を希望する場合は、その費用が助成されます。
・耐震診断後の耐震改修に関する助成
耐震診断の結果、評価が良くない場合(上部構造評点が1.0未満)は、要件を満たせば以下のような耐震改修工事に係る費用の一部が助成されます。
・補強設計助成
・耐震改修工事助成
・簡易改修工事助成
・不燃化耐震改修工事助成
・不燃化建て替え
・除却工事助成
災害で家が壊れたときに利用できる制度
自然災害にあい、自宅が壊れて大きな損害を受けたときは、次の2つの制度を利用できるニャン。
・被災者生活再建支援制度
被災者生活再建支援制度とは、災害により自宅に大きな被害を受けた世帯に対し、被災者⽣活再建⽀援⾦が支給される制度のことです。損害の程度により支援金が支給されます。
・住宅の応急修理
住宅の応急修理とは災害救助法に基づく制度で、災害により住宅が半壊もしくは準半壊となる被害を受けたが、修理をする資力がない世帯、または大規模な補修をしなければ住むことができない状態にある世帯に対し、修理費を支給する制度です。
応急修理の対象となるのは、屋根、壁、床、トイレやキッチンの配管・電気配線など日常生活に欠かせない部分の修理で、費用は限度額までの範囲で支給されます。
※公的制度について、詳細は自治体のホームページでご確認ください。
お金以外にもやっておきたい災害への備え
自然災害に対して、お金の備えや保険の見直し、災害への備えや被害を受けたときに利用できる公的助成制度の確認については理解できたけど、
その他にも今のうちにやっておきたい備えはある?
■防災グッズの備え
災害時に備えて、食料品や飲料水を最低3日分、大規模災害に備えるなら1週間分は準備しておきたいです。その際、おすすめの方法があります。
それは、「ローリングストック」です。これは非常食を日常生活でも使っていき、使った分を新しく補充していくという方法です。肝心なときに賞味期限が切れることを避けられるので、ぜひ取り入れましょう。
防災グッズについては、インターネットや情報誌などで確認できます。
被災経験者の声によると、次の物は実際に役立ったようです。
うちの防災用品の中に無いものもあるから、準備しなくちゃ!
防災グッズは普段使いのもので良いし、物によっては100円ショップでも変えるニャ。
防災リュックなどに入れて1ヵ所にまとめて準備しておくニャン。
現金や貴重品の備え
自然災害で停電が起きると、銀行のATMや店舗のレジなどが使えなくなります。普段の買い物はキャッシュレス決済を利用していても、被災時は利用できません。
そこで、現金の準備が重要になります。できれば生活再建の時期も見越して、1ヶ月分の食費、日用品費、交通費、ガソリン代を現金で持っておきましょう。それも1万円札ではなく、千円札や小銭などに両替して防災リュックに入れておくと良いでしょう。
細かいお金が必要なのね。防災用のお財布を用意しておこう。
通帳や印鑑、母子手帳、健康保険証、運転免許証やマイナンバーカードなどの身分証明書を災害時にすぐに持ち出せるようにしておくことも大切ニャ!
家の外での備え
災害時の避難所はどこになるのか、洪水の危険はないか、土砂災害の危険はないかを知るために、自宅周辺の状況をハザードマップで確認しておきましょう。また、災害時は外出して家族がバラバラになっている可能性もあります。そんな状況に備え、安否確認の方法や集合場所を決めておきましょう。
災害時に1人になってしまうのはとっても不安だもんね。ちゃんとマネ男と決めておかなくちゃ。
新型コロナウイルス感染拡大への備え
災害時でも新型コロナウイルス感染が懸念されます。防災グッズの中には、使い切りマスク、アルコール消毒液、アルコール除菌ペーパー、うがい液、ハンドソープ、体温計も入れておきましょう。また、避難所ではマスクの着用、密を避けるなど感染対策も必要です。
避難所ではガイドラインに従って感染対策が取られると思いますが、もし濃厚接触者である場合や発熱など感染の疑いがある時、あるいは自宅療養者である場合は、避難所での指示に従いましょう。
自然災害への備えはとっても重要ニャ。公的制度の知識を持つこと、緊急資金の準備、保険などによる備えなど、できることはいくつもあるニャ。
いざというときに慌てないように今から準備することが大事ね。
僕の分の食料も忘れないでニャ〜?
(ハッ!!)も、もちろんよ!
執筆者:前佛朋子(ぜんぶつともこ)
ファイナンシャル・プランナー CFP®認定者、整理収納アドバイザー、ライター
家計コンサルティングZEN 代表
『安心と心のゆとりのある暮らしができる人を増やしていく』という理念のもと、1人でも多くの人に、安心できる暮らしと心の余裕を手に入れていただくために活動。
金融商品や保険を販売しないファイナンシャル・プランナー。
現在はマネー関連の執筆をはじめ、家計見直し、ライフプラン、貯蓄プランなどの相談を行う。この他、自らの経験から遠距離介護など介護関連の相談も受けている。