自分で申請しないともらえない!?「年金の家族手当」と呼ばれる“加給年金” もらえる条件や金額は?
目次)
1.加給年金ってなに?
2.加給年金の給付条件は?
3.加給年金でもらえるお金
3-1. 誰がいくらもらえる?
3-2. 加給年金の支給例(シミュレーション)
4.振替加算とは
5.加給年金の申請手続きと必要なもの
5-1. 申請する時に必要な書類
5-2. 手続きの流れ
6.加給年金にまつわる気になることQ&A
そうだ、マネキン。この間ニュースで「加給年金」について取り上げられていたんだけど、あれってなんなんだ?
家族手当としてもらえるお金ってイメージだけど、私もよく知らないわ。
加給年金は、ママの言うとおり、老齢厚生年金に付随する「家族手当」のようなもので、65歳になり老齢厚生年金を受け取る人に一定要件を満たす「配偶者と子ども」がいることで老齢厚生年金に加算される年金制度だニャン。
なるほど。僕ももらえるものなのかな?自動で支給されるもの?
加給年金は自分で申請しないと支給されないニャ!加えて、対象者の条件や注意点もあるニャ。
せっかくだから、今日は加給年金の基礎から、対象者の条件、支給額の計算方法や手続きの流れ、注意点までまるっと説明するニャン。
1.加給年金ってなに?
まずは加給年金の基本を押さえておくニャ!
加給年金とは
加給年金は、老齢厚生年金に付随する「家族手当」のようなものです。つまり老齢厚生年金の受給が始まると、家族手当のように加給年金が上乗せされる仕組みになります。
扶養家族がいる場合、通常の老齢厚生年金にプラスして支給されるので年金収入がメインになる老後の家計には心強い手当と言えます。
この後詳しく説明するけど、記述のとおり、加給年金は「厚生年金」について適用されるものだから、会社員や公務員などの第2号被保険者しか受け取ることができないニャ。自営業者は適用外になるニャン。
ただし、家族がいれば必ず受け取れるとは限りません。また、受け取る時には自分で申請する必要があるため、申請しないと受け取ることができません。
さらに、分かりにくくしているのは加給年金を受け取ることができるか否かを一目で確認する方法がないことです。
年に1回送られてくる「ねんきん定期便」、または、ねんきんネットでは年金見込み額を確認することができるけど、そこでは確認はできないの?
加給年金の情報は残念ながら載っていないニャ。なぜなら、ねんきん定期便やねんきんネットには配偶者や子供など被扶養者の情報が反映されていないからニャン。
以上を踏まえて、加給年金を受け取れる対象者と要件などを解説していきますので、しっかりと確認しておきましょう。
2.加給年金の給付条件は?
加給年金を受け取れる条件を見ていきましょう。
まず、受給対象者の要件については、以下のすべてに当てはまることです。
生計維持している配偶者や子供についても、以下の要件があります。
これらの要件をクリアすると、配偶者が65歳、また、子供の場合は18歳(1級・2級の障害状態は20歳)になるまで支給を受けることができます。
けっこう条件が細かいのね〜!
ポイントは配偶者が年下であることニャ。夫が年下の妻を、あるいは妻が年下の夫を生計維持している場合など性別に関わりなく支給されるニャン。
3.加給年金でもらえるお金
加給年金の条件を見ると、僕も該当してるみたいだ。
実際に支給額はいくらくらいになるのか知りたい!
そしたら加給年金でもらえるお金について見てみるニャ。
誰がいくらもらえる?
加給年金の支給額は、受給者に生計維持をされている対象者によって異なります。詳細は以下の通りです。
ん?表中の配偶者の欄の「※特別加算」ってなんだい?
これは加給年金にプラス(加算)して支給されるものニャ。受給者の生年月日に応じ33,100円〜165,100円の加算があるニャン。
表中の388,900円には、昭和18年4月2日以降生まれの方に加算される特別加算額165,100円が含まれているニャ。
また、注意点として加給年金の支給には期限があります。表中にありますが、配偶者の場合は65歳になるまで、子の場合は18歳到達年度の末日まで(該当する障害のある子は20歳になるまで)と決められています。
支給額については他の公的年金と同様に、賃金・物価変動に応じて改定されるため毎年必ず定額ではないことも覚えておきたいところニャ!
加給年金の支給例(シミュレーション)
もっとわかりやすいように、加給年金の支給額を2パターンでシミュレーションしてみるニャ!
支給例1
夫(65歳)、妻(62歳)
夫が65歳になり老齢厚生年金を受け取る時に妻は62歳、年齢差3歳のご夫婦のケースです。子供はいません。
妻は65歳から自身の老齢基礎年金・老齢厚生年金を受け取るとします。妻が62歳から65歳になるまでの3年間、夫の老齢厚生年金に加給年金が加算されます。加給年金の3年間の支給額合計は116万6,700円です。
支給例2
夫(65歳)、妻(60歳)、長男(22歳)、次男(16歳)
夫が65歳になり老齢厚生年金を受け取る時に妻は60歳、年齢差5歳の夫婦と2人の子供がいるケースです。
妻は65歳から自身の老齢基礎年金・老齢厚生年金を受け取るとします。受け取る加給年金は、妻が60歳から65歳になるまでの5年間で合計194万4,500円です。子供については、16歳の次男が「1人目の子」に該当し16歳から18歳になるまでの2年間で447,600円受け取れます。なお22歳の長男は加給年金の要件を満たしていないため受け取ることはできません。妻と次男を合わせて239万2,100円の加給年金が夫の老齢厚生年金に加算されます。
なるほど!ということは、歳の差がある夫婦や18歳未満の子供がいる場合は加給年金の受給総額も大きくなるんだな。
その通りニャ!
4.振替加算について
配偶者が65歳になると加給年金の支給は打ち切りとなります。ただし、一定の条件を満たすと、配偶者の老齢基礎年金には「振替加算」といわれる年金が一生涯支給されます。
振替加算?何かしら。
このように特別な加算がつくのは年金制度の変遷によるものです。
かつて国民年金の加入が任意だった時期がありました。加入していない期間(いわゆる「カラ期間」)がある場合、年金の受給資格期間にはカウントされるものの、年金額に反映されないため受給額が低くなってしまいます。
これを考慮したものが、振替加算の制度、ということニャン。制度の特徴や対象条件について説明するニャ!
加給年金と合わせて押さえてほしいニャ。
振替加算の特徴として、
・妻(配偶者)が65歳になり加給年金が支給停止になった後、一定の条件の元で妻(配偶者)の老齢基礎年金に加算される
・年上の妻など加給年金が支給されないケースでも条件が整うと支給されることがある
・加給年金同様に配偶者の性別に関わりなく支給される
・1966年4月2日以降に生まれた方には支給がない
などの決まりがあります。
対象となるのは以下の条件を満たしている必要があります。
支給額は、加給年金と同様に対象者の生年月日によって年額14,995円から223,800円まで金額が異なるニャ※。
※期間や支給額など詳細は日本年金機構のHPを参照してください。
日本年金機構「加給年金額と振替加算」
手続きの方法については、以下の2点に留意ください。
2. 妻が年上の場合などは届出が必要です。「国民年金 老齢基礎年金額加算開始事由該当届」を提出します
主な支給ケースのイメージ図については以下をご覧ください。
<イメージ図>妻が年下のケース
<イメージ図>妻が年上のケース
補足として、イメージ図にはないけど、生計を維持している夫(妻)の厚生年金の加入期間が240月以上に到達して、かつ、年金額改定が行われた場合にも、申請を行うことで支給されることになるニャ。
5.加給年金の申請手続きと必要なもの
加給年金を受け取るには申請が必要だったね。
どんな書類が必要なのか教えて!
申請する時に必要な書類
申請する時には、年金の請求書などへの記入が必要です。受給開始年齢に到達する3ヶ月前から送付される「年金請求書(事前送付用)」を利用します。年金の受給開始後の申請であれば「老齢厚生年金・退職共済年金 加給年金額加算開始事由該当届」に記入します。
なお、以下の通り添付書類も必要となりますので確認しておきましょう。
添付書類の注意点は以下の3点です。
2. 戸籍や住民票は「加算開始日以降に発行されたもの」かつ「提出日の6ヶ月以内のもの」
3. 対象の子に障害がある場合には診断書が必要。詳細は年金事務所へ確認
マイナンバーを登録済み、あるいはマイナンバーを請求書類に記入できる場合は、添付書類の一部(住民票と所得証明関連の書類)を省略することができてスムーズニャ!
ただし、戸籍関係の書類は省略不可のため留意が必要ニャン。
手続きの流れ
加給年金は申請してからいつお金がもらえるのかしら?
加給年金は、加算開始日が属する月の翌月分から受け取れるニャ。加算開始日の具体例については、以下の表を参照してニャン!
書類をすべて整えたら年金事務所または街角の年金相談センターへ提出します。
6.加給年金にまつわる気になることQ&A
加給年金を受け取るには、対象者の条件や注意点がいろいろあるんだなぁ。
他にも疑問があったりするだろうから、ここからは、加給年金について多い疑問をQ&A形式で紹介するニャ!
Q.加給年金はいつから検討すべき?
A.内閣府が2019年に発表した「「老後の生活設計と公的年金に関する世論調査」によると、公的年金制度に関心を持った年齢で最も多かったのが「50代」です。
50代は、役職定年などで年収の変動があったり、子供たちが独立したりと定年後の生活設計を考えるには適切なタイミングでしょう。公的年金は老後の収入に影響も大きいと言えます。特に夫婦の年齢差が大きい場合、加給年金の対象になるか、支給総額がどのくらいか、しっかりと確認しておきたいところです。
Q.加給年金が支給停止になるのはどんなケースがあるの?
A.世帯の状況や家計の変化に伴い、支給停止となるケースがあります。主なケースを押さえておきましょう。
・配偶者や子供の死亡
・配偶者と離婚した
・在職老齢年金(働きながら受け取る老齢厚生年金)が全額支給停止となった
・配偶者に老齢・退職または障害による年金の受給権利や受給が発生した
・配偶者や子供が生計を維持されなくなった
・受給者が老齢厚生年金の繰り下げをした
Q.2022年4月「加給年金の支給停止規定の見直し」の影響は?
A.改正により、加給年金の加算対象となる配偶者が老齢厚生年金を受け取っていなくても、受け取る権利がある場合は支給停止となりました。規定の見直し前は支給停止となってなかったので、支給停止になる範囲が拡大したと言えます。
例えば、在職老齢年金が全額支給停止となるケースなどが該当します。ただし、経過措置も設けられているので詳細を知りたいときは年金事務所に確認しましょう。
このように加給年金にはいろいろな決まりがあるけど、受け取れるなら絶対に申請して老後資金の足しにするべきニャ。支給を受けられるか、夫婦や子供の年齢や年金加入歴を鑑みて早めに確認しておくことをオススメするニャ!
ちなみに、ねんきん定期便やねんきんネットで詳細を確認できないと言っていたけど、加給年金について疑問があるときの相談窓口はあるかい?
年金事務所の窓口相談を利用するのが良いニャ!
私たちも該当するとなれば早速準備を始めましょう!老後資金は備えて損はないわ。
そうだな!ママのためにも申請しようと思うよ。
ママはマネ娘と違ってしっかりしてるニャア。
はっくしょん!んー?誰かに噂されてるのかな〜。
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